専用環境や高機能端末なしにタブレットやスマートフォンで高密度の3D映像を視聴・操作できる技術の開発が進んでいる。開発を行うNTTドコモ(以下略、ドコモ)とNTTコミュニケーションズ(以下略、NTT Com)は7月25日、開発中の「マルチプラットフォームクラウドレンダリング」技術をNTT Comのエッジコンピューティング環境で3D映像のリアルタイム配信の技術実証に成功したことを発表した。
クラウド・エッジサイドで高精度の映像化処理を行いモバイル端末に配信する「マルチプラットフォームクラウドレンダリング」
実証を行ったドコモが開発する新技術「マルチプラットフォームクラウドレンダリング」は、3D映像処理アプリケーションにミドルウェアとしてアドオンし、クラウド・エッジサイドで高精度の映像化処理を行いその結果をモバイル端末に配信する技術。今回の実証実験では、エッジコンピューティング環境にNTT Comの「docomo MEC」を活用、5G通信及び実際の利用が想定される屋内無線LAN・有線LANを経由して、タブレット・スマートフォンでの3D映像品質や操作・応答性の確認と評価を行った。
実験は、インターネットを利用するクラウドコンピューティング環境と閉域ネットワークを利用するエッジコンピューティング環境で「マルチプラットフォームクラウドレンダリング」を使用した3D映像の操作・応答性能の検証を目的に実施、目標値として、操作の応答時間が人の体感できる0.1sを下回ること、映像品質が一時的に低下しても正常な状態へ1.0s以内で回復することを設定している。
テスト環境には、外部の移動先での利用を想定しエッジコンピューティング環境には「docomo MEC」を活用、クラウドとエッジ両環境に「マルチプラットフォームクラウドレンダリング」を構築し5Gの無線接続した場合の性能比較を行った。また、5G接続試験も実施、SA基地局(5G専用)とNSA基地局(5G・4G共用)での比較試験も行っている。工場・倉庫・店舗などの施設内での利用シーンを想定したオンプレミス環境では、エッジサーバとクラウドコンピューティング上に「マルチプラットフォームクラウドレンダリング」を構築、有線LAN・無線LAN接続した場合の性能比較を行った。
実験の結果、エッジコンピューティング環境では、安定したビットレートを保つことを実証された一方で、クラウドコンピューティング環境では、局所的にビットレートが低下する現象が定期的に発生することが確認できたという。この現象は動画の進行に与える影響は微小ながら、映像品質の部分で境界線や物体の形状が不鮮明になるなどの問題を発生させており、新たな修正課題となったが、現象自体は目標設定した操作応答時間の範囲に収まっており同技術の品質について問題ないことが実証された。
オンラインゲームなどで活用されてきたが、産業用での利用は困難といわれたクラウドコンピューティング環境での高精度3D映像レンダリング技術。今回の実証実験によりエッジ環境の活用で建設現場・工場・倉庫・店舗などの環境での利用が期待できるため、両社は新技術を活用したサービスの提供を2025年度中に行うことを目指し、開発を続けるという。