7月7日の東京都知事選と同時に投開票された都議補欠選挙で自民党が惨敗し、岸田文雄首相の党総裁再選に黄信号が灯る中、鈴木俊一財務相の存在感が増している。外国為替市場では1㌦=160円近傍の円安基調が続く中、今夏の中央省庁人事で神田真人財務官が7月末で退任し、三村淳国際局長が昇格する〝サプライズ〟人事があったためだ。
神田氏は今年に入り為替市場で円安が急激に進むと連日報道陣の取材に応じ、実際に春には約10兆円規模の為替介入に踏み切るなど〝令和のミスター円〟との異名を持つ。鈴木氏もこうした神田氏と歩調を合わせる形で国際会議の場で過度な円安進行をけん制する発言を繰り返すなど、岸田首相を〝援護射撃〟する姿勢を鮮明にしてきた。
一方、神田氏の後任である三村氏は「為替介入に消極的」(政府関係者)とされる。霞が関では「神田氏にように市場をにらみつつ為替動向に柔軟に対応できるのか疑問だ」(経済産業省幹部)と、すでに三村氏の手腕を不安視する向きがあり、鈴木氏の手腕が期待されているのだ。
政権基盤が揺らぐ中、自民党内からも「岸田首相の退陣は不可避な情勢で、その間隙を狙った投機筋に仕掛けられるのではないか」(閣僚経験者)といった〝悪い円安〟への懸念は根強い。加えて日銀が7月末の金融政策決定会合で国債買い入れの減額方針と同時に追加利上げに踏み切れば、金利はさらに上昇する見通し。
鈴木氏がくしくも9日の閣議後会見で「過度な金利上昇やインフレは、それが起こってから対処するのではなく、未然に防ぐことが重要」と述べたように、今後はさらに鈴木氏の指導力に注目が集まりそうだ。