悲願のプラチナバンドがスタート、それでも、厳しい財務状況続く楽天

大手3社に追いつくには継続的な設備投資が欠かせない

「我々が熱望していた大変重要なものだ」

 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、商用サービスを始めた「プラチナバンド」(携帯電話の電波がつながりやすい周波数帯)の価値について、このように強調する。

 従来、同社傘下の楽天モバイルが利用してきた周波数帯は、電波の直進性が高いため建物に遮られやすく、場所によっては届きにくい。一方で、プラチナバンドの電波は遮蔽物を回り込みやすい性質を持ち、屋内や地下にも届きやすい。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社は以前からプラチナバンドを活用してきた一方、後発の楽天モバイルは当該周波数帯の割り当てがなく、通信が〝つながりにくい〟イメージを持たれてしまう一因となってきた。

 だが、2023年10月に総務省から割り当てを受け、電波発射試験などの準備を経て、6月27日から商用サービスを始めた。この時点で、同社の契約回線数は700万件台だが、三木谷氏は「1000万回線までさらにスピードを上げていきたい」と意気込む。

 ただ、楽天モバイルが使い始めたプラチナバンドは700メガヘルツ帯のうち、帯域幅が3メガヘルツの二つの枠であり、大手3社が利用している帯域よりも狭い。当初は商用サービスの対象エリアも東京都内の一部にとどまる。楽天モバイルは33年度末までに544億円を投じて1万局超の基地局を整備するとしている。この計画が多少前倒しされたとしても、「プラチナバンドの効果が全国規模で実感できるようになるのは、まだまだ先」(業界関係者)だ。

 大手3社に追いつくには継続的な設備投資が欠かせないが、楽天グループの財務状況は依然厳しい。

 24年1―3月期における携帯通信事業の営業損益は719億円の赤字で、金融事業や電子商取引(EC)事業での稼ぎを食い潰す状況は変わらない。配当面でも23年12月期は無配に転落した。25年には約4700億円の社債償還が迫っている。

 難局打開に向け、三木谷氏の手腕が問われ続ける。

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