行政や製造業、不動産、IT、インフラ金融機関など多種多様にわたる業種・業界で採用されている顧客データ統合ソリューション「uSonar」を提供するユーソナー(ユーソナーは7月17日、都内で記者説明会を開き、「日本企業の縮図レポート」を発表した。

法人データベースとして決定版を自負するユーソナー

はじめに、ユーソナー 代表取締役社長の長竹克仁氏が同社の説明に立った。同氏は「当社のミッションは“情報が企業を自由にする”だ。多くの企業において、経営戦略上の意思決定やセールスマーケティング活動を行っていくうえで、内在している情報は大事に利活用されている。当然、内部だけでなく統計情報や属性情報などの外部データを活用しながら意思決定に役立てる。つまり、データの利活用を促進することで企業における選択肢の幅や可能性の数を広げ、自由に経済活動を行うことを当社のデータソリューションを通じて支援できればと考え、ミッションを掲げている」と述べた。

  • ユーソナー 代表取締役社長の長竹克仁氏

    ユーソナー 代表取締役社長の長竹克仁氏

こうしたミッションを掲げる同社だが、そのために最も重要なものとして法人のデータベースソリューションを位置付けており、長竹氏は「当社の法人データベースは日本企業の決定版のデータベースであり、精度が高く、網羅性があり、粒度が細かい。マスターデータベースを管理していくことが当社においては最も重要なものだ」と力を込める。

また、長竹氏は「企業に合わせたOne to OneマーケティングやABM(Account Based Marketing)マーケティング活動に対して、企業詳細情報を付与することで、現状の興味関心を把握し、インテントデータも組み合わせた支援を行うことが可能だ」と続けた。

820万件の法人データベース「LBC」

そして、同社が自身を持つデータベースこそが820万件の法人データベース「LBC(Linkage Business Code)」を構築し、顧客データの名寄せサービスやマーケティングデータを提供。

LBCのデータソースは官報や有価証券報告書といった公的な公開情報をはじめ、商業・法人登記謄本の全件、オフィシャルな情報がない事業所拠点情報を手作業で収集している。また、社名変更や移転といった過去の変更情報を8億件、商業・法人登記簿や有価証券報告書、企業ホームページなどメンテナンス項目は年間2000万項目に上る。

  • 「LBC(Linkage Business Code)」の概要

    「LBC(Linkage Business Code)」の概要

ユーソナー サポート本部 MXグループ マネージャーの桧山直樹氏はLBCの特徴について「30年間で820万件を蓄積してきたデータの『深さ』、公的情報やホームページのアクセス情報など120項目に及ぶ情報を収集する『幅広さ』、他社データベースとも連携して年間2000万項目以上を最新の情報に更新する『新鮮さ』を持つデータベース」と説明する。

  • ユーソナー サポート本部 MXグループ マネージャーの桧山直樹氏

    ユーソナー サポート本部 MXグループ マネージャーの桧山直樹氏

主力サービスとしては、顧客データ統合ソリューションでLBCのプラットフォームである「uSonar」を中核に、経営戦略プラットフォーム「プランソナー」、企業情報閲覧&名刺管理アプリ「mソナー」を提供している。

  • 「uSonar」の概要

    「uSonar」の概要

LBCを調査データとして活用

今回、同社ではLBCを調査データとして活用し、日本企業の縮図レポートをプレスリリースで定期提供(1月、7月)、メディアなど個別依頼でのカスタム提供を開始した。これは、法人番号を持つ設立登記法人452万社を調査母数とし、地域や業種、設立年、売り上げ、従業員数、評点、企業消滅スコア、トレンド情報をはじめ、さまざまな分析軸で抽出されたデータをもとにレポートを作成するというものだ。

  • 日本企業の縮図レポートにおける全体像

    日本企業の縮図レポートにおける全体像

その具体例として「健康経営優良法人2024 認定企業が多い都道府県ランキング」「12月決算の企業が多い都道府県ランキング」「特許を1~5個持つ企業が多い都道府県ランキング」「社長が女性とみられる企業が多い都道府県ランキング」「家族経営とみられる企業が多い都道府県ランキング」「企業消滅スコア」の6点のレポートが紹介された。

いずれのレポートも母集団は、2024年5月時点で非倒産非閉鎖で法人番号ありの本社データとし、法人番号を持ち、法人設立登記のある、非倒産非閉鎖法人に限定した。

  • 日本企業の縮図レポートにおけるデータソース

    日本企業の縮図レポートにおけるデータソース

都道府県ランキング

健康経営優良法人2024 認定企業の分析対象データは経済産業省のリストにある2万社、都道府県ごとに分類して、都道府県ごとの母数を作成。健康経営優良法人データも都道府県ごとに分類し、都道府県ごとの割合を計算して割合の多い順にランキングを作成・地図化した。結果として、山形、島根、愛知、岡山、長野が上位にランクインし、経産省の資料でも同じ傾向が確かめられたという。

  • 「健康経営優良法人2024 認定企業が多い都道府県ランキング」

    「健康経営優良法人2024 認定企業が多い都道府県ランキング」

12月決算の企業が多い都道府県ランキングの分析対象データは12万5000社、データソースは有価証券報告書、そのほかとなり、東北・日本海側エリアを中心に多く分布していることがうかがえる結果となった。特許を1~5個持つ3万2000社を対象とし、データソースに特許庁サイトのデータを用いたところ、中部・北陸企業と東京において割合が高いことが判明。

社長が女性とみられる企業が多い都道府県ランキングは65万7000社が対象となり、独自ロジックにより抽出。結果は、首都圏・関西・九州北部など大都市を抱えるエリアで高い傾向があるものの、抽出ロジックは同社の定義のため検討を進める必要があるとのことだ。家族経営とみられる企業が多い都道府県ランキングは、16万社を対象に独自ロジックで抽出し、東北・日本海側で割合が高い傾向となった。

企業消滅スコア

一方、企業消滅スコアは新たに開発中のものだ。法人データ452万社に対し、解散や倒産をした法人データをはじめ、100種類以上のさまざまなデータ指標を加味して特徴傾向を分析し、同社オリジナルのスコアを算出。

  • 「企業消滅スコア」のデータソース

    「企業消滅スコア」のデータソース

スコアの高低によりA~Hの8段階で格付けを付与(開発・実証実験中につき算出ロジックの詳細は非公表)し、さまざまな企業属性と企業消滅スコアの関係を分析した。結果、格付けA~Bの上位ランクに出現する企業属性、G~Hの下位ランクに出現する企業属性が出てきたという。

例えば「健康経営優良法人」という属性を持つ企業は、企業消滅スコアの格付けA~Bのカテゴリーに97%の確率で含まれていたほか、「同じビル内におしゃれなカフェが入っている企業」という属性を持つ企業は、企業消滅スコアの格付けG~Hのカテゴリーに13%の確率で含まれていることが判明した。

  • 企業消滅スコアの格付けG~Hのカテゴリーにおいて含有率が高い企業属性

    企業消滅スコアの格付けG~Hのカテゴリーにおいて含有率が高い企業属性

なお、各企業属性が企業消滅スコアの中で抜きん出て作用しているというものではなく、企業消滅スコア自体はさまざまなデータからの総合的スコアとなることから、企業消滅スコアは実証・実験段階であり、今後も精度を高める検討を続けていく方針だ。