JICによるJSRの買収が完了 半導体業界再編で競争力強化へ

ライフサイエンス事業の再建も

 出遅れている日本の半導体産業の競争力を高めることができるか─。政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)グループによる半導体材料大手のJSRの買収手続きが完了した。

 買い付け総額で約9000億円、純有利子負債を含んだ買収総額が1兆円規模となり、JSRは上場廃止となった。JICグループで投資判断を受け持つJICキャピタル社長の池内省五氏は「細分化された製品を束ね、パッケージとして競争力を高めていく」と意気込みを語る。

 JSRは半導体の製造で使うフォトレジスト(感光材)の先端品の世界シェアで2割強を占める首位。ただ、半導体メーカーの規模が拡大する一方、自社の交渉力が弱まっていた。JICによる買収でJSRの経営資源を半導体材料に集中させる。

 加えて、国内の有望な競合他社やフォトレジスト以外で競争力を持つ企業の買収なども検討。JSR社長のエリック・ジョンソン氏は「今後、研究開発費がもっと増える。製品や生産技術の開発でパートナーと連繋し、効率を高めたい」と語り、業界再編を主導する方針を示す。

 具体的な買収先の企業は明らかになっていないが、池内氏は「日本は中堅規模の企業が鎬を削っており、競争力もある。しかし、長期的には欧米の大企業に劣後する恐れがある」として、フォトレジストを使う工程の前後で使う材料メーカーの買収を検討する考え。既にJSRは半導体の成膜工程で使う材料などを製造するヤマナカヒューテックを買収している。池内氏は「日本の半導体の材料産業にとってマイルストーンになる」と話す。

 JSRは24年3月期の連結決算は55億円の最終赤字。特に大幅な営業赤字を計上したバイオ医薬品の開発・製造受託事業(CDMO)などのライフサイエンス事業の再建も課題だ。「運営力を高められれば相当な収益を獲得できる」と池内氏は語る。

 JSRの取締役会も刷新。池内氏や富士フイルムでCDMO事業を統括した石川隆利氏などが新たに取締役に就く。新生・JSRの底力が試される。

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