休息なしでは長くはもたない!
「企業も個人もすごく熱心に働いているのに、こんなに何も達成できていない場所は日本以外にない」と本書は言う。日本は「過労死」という言葉の生みの親で、仕事内容がそもそも必要なのかを立ち止まって考える時間さえ取らずに、ただ働き続けているのが原因だと断言する。労働倫理と休息倫理をコインの裏表に例えながら「全ての行動の基本は余暇である」との、アリストテレスの言説を受け入れ「高尚な余暇」こそが、タイム・オフの光り輝く最終目標だと主張する。
本書には、その他、トマス・アクィナス、マルクス・アウレリウス、アンリ・ポアンカレ、バートランド・ラッセルなどタイム・オフを極めた35人の賢人のタイム・オフが登場する。みんな、大哲学者や数学の天才ばかりだから、頭の構造が特別仕立てで日本人には無理と思うかもしれないが、普通の日本人も登場する。
片付けコンサルタントの近藤麻理恵氏については「こんまりメソッド」を紹介して、ときめかない物や予定は捨ててしまうタイム・オフを紹介する。株式会社ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏については「会社の名前はワーク・ライフバランスだが、等しくバランスを取ることに重点を置いているわけではなく、大切にしているのは相乗効果なんです」と言わせている。私が平素から、尊重する「ワーク・ライフシナジー」と同義だ。
本書は生産性と創造力を取り戻す生き方の指南書だが、その肝は集中力の強化である。本書の扉の裏には古代ローマの詩人オウディウスの「休息なしでは長くはもたない」が掲げられているが、日本にも「よく遊び、よく学べ」という格言があった。
大人達もスマホを切って、休息・睡眠・運動・旅・遊びの余暇をもたなければ、ナレッジワーカーにはなれないことを教えてくれる。随所に「この本をいったん閉じて寝ましょう」等という見開きページが現れる、洒落た本である。