農林水産省は6月21日、堂島取引所(大阪市)が申請していたコメの指数先物の本上場を認可した。これを受け、堂島取引所は8月中に指数先物の取引をスタートする。指数は、農水省が毎月発表しているコメの相対(あいたい)取引の平均価格をベースに算出。この平均価格は、全国のコメの価格を集約化して算出するため、各地で銘柄米をつくる農家が指標にしやすく、商品先物取引法にある「十分な取引量が見こまれる」という基準をクリアできると農水省が判断したようだ。
先物取引の利点は、事実上、あらかじめ決められた価格で売買できるため、生産者、流通業者は、米価の乱高下のリスクを回避することができることだ。一定の取引参加者がいれば、コメの価格形成機能を持つことにもなる。
今回、認可の「壁」とされたのが、コメの先物取引に慎重な態度をとってきた自民党。現在、コメのプライスリーダーは農協だ。農協はコメの収穫期の秋、概算金として生産者に価格を提示する慣例があるが、先物取引が活発になれば、この価格決定権が奪われることになりかねない。農協を支持基盤とする自民党も当然、慎重になった。
堂島取引所(当時は関西商品取引所)は、民主党政権下の2011年から、コメの先物取引を「試験上場」として続けてきた。新潟コシヒカリなどを対象にし、21年7月には「本上場」を申請したが、農水省は認可しなかった。このとき、自民党は慎重に判断するようわざわざ農水省に申し入れをしている。
米価は低迷したままだ。今回、コメの銘柄の多くを含む指数取引という手法を使うことで参加者が使いやすくなったという事情があるほか、中国・大連でコメの先物取引が活発になっているという背景もあったようだ。
もちろん、一攫千金を狙う投資家も参入する可能性もある。米価格が乱高下して国民生活に影響が出ることはないのか。堂島取引所と農水省のかじ取りが注目される。