経済産業省は、経済安全保障に関する行動計画を改定した。重要技術や産業基盤への影響をシナリオ分析やサプライチェーン(供給網)分析などで把握。技術優位性を確保するとともに経済安保上のリスクに対応し、政策立案に生かす。サプライチェーンの混乱に備えるため、早期警戒システム(EWS)の構築を検討する。
サプライチェーンの強靱化を巡っては、英国が脆弱な重要物資を特定し、供給網で生じる可能性のある混乱を調べて潜在的な危機を早期に特定する仕組みを整備。韓国でもサプライチェーン早期警報システムを含む法制化が進んでいる。
日本が技術優位性を持つ分野では、流出を防ぐための輸出管理を強化する。外為法に基づく「リスト規制」の対象となっていない汎用品の輸出を制限する「キャッチオール規制」を見直す。リスト規制では、大量破壊兵器や通常兵器の開発に用いられる可能性が高い原子力や化学兵器、先端素材など15品目について、海外移転に事前許可を求めている。
ただ、軍事利用と民生利用が可能な「デュアルユース」技術の領域が拡大し、汎用品についても軍事転用のリスクが高まっている。このため経産省は、先端技術の海外移転について事前報告を義務化し、センサーなどの汎用品であっても、軍事転用の恐れがある場合には輸出許可申請を求める方針だ。
経済安保の行動計画は昨年10月に公表され、官民での情報共有などを進めてきた。中国による経済的威圧や過剰生産問題などが供給網に影響を与える懸念は一層高まっている。産業支援策と産業防衛策を一体的に実施し、経済安保の確保に向けて産業基盤を強化。米国をはじめとする同盟国や同志国との国際協調も進める。