磯崎氏肝いりのヘルスケア事業の拡大へ キリンHDがファンケルを買収

6月14日、キリンホールディングス(HD)がファンケルの完全子会社化を目的とした公開買い付け開始を決定した。

 社長COOの南方健志氏は「キリングループとファンケルグループは、健康課題の解決を通じて世の中に貢献するというビジョンを共有しており、成長戦略を実行するための最重要パートナー。本件が成立すれば両グループの強みがさらに生かされ、国内外のお客様に新たな価値を提供することができると確信している」とコメント。

 キリンHDは健康意識の高まりをとらえ、10年に発見したプラズマ乳酸菌を軸に、当時社長であった磯崎功典氏はヘルスサイエンス事業に注力してきた。

 19年には美と健康課題に取り組むファンケル株式の約33%を取得し、業務提携を図ってきた。ファンケルの化粧品などを始めとしたスキンケア商品に、キリンの素材を取り入れた商品開発をする、逆に、ファンケルの代表商品・ダイエットサプリメントの『カロリミット』とコラボしたキリンのノンアルコールドリンクの商品化を行い、それぞれ人気を呼んでいた。TOB成立後完全子会社化に伴い、商品開発スピードとバリエーション展開の更なる加速を狙う。

 ファンケルは現在売上高1109億円、営業利益126億円(24年3月期)だが、国内が9割で海外は1割程度にとどまる。今回キリンHD傘下に入ることで、キリンの子会社・オーストラリアのブラックモアズが持つ海外販路を活用し、オーストラリア、東南アジアなど海外展開が見込める。

 ファンケル社長CEOの島田和幸氏は「本件が成立することで、これまで制限されてきた両グループ間でのノウハウ・技術情報等の共有が可能となり、シナジー効果をより短期間で最大化できると考えている」とコメントした。

「体の内側(サプリ等)と外側(化粧品等)から両面でのヘルスケアが可能となり、シナジーが加速するのでは」と関係者は語る。両社は手を組むことで、「アジア・パシフィック最大級のヘルスサイエンスカンパニーを目指す」としている。