Samsung Electronicsの全従業員12万5000人のうち3万人余りが加入している、同社最大の労働組合である「全国サムスン電子労働組合(NSEU)」(組織率約25%)が7月8日から10日まで3日間にわたるストライキを行っている。
同組合は、6月7日にも同社創業以来初となるストライキを実施していたが、賃金交渉が決裂したとして今回2度目のストライキの実施に踏み切った。初日のスト参加者は同労組によると6540人に上り、このうち5211人は、先端半導体の開発と製造をになうソウル近郊の華城(ファソン)事業所や周辺の半導体工場の生産ラインに従事する組合員だという。
Samsungは事業部門ごとの経済的付加価値(EVA:Economic Value Added)に基づいて例年1月に成果給の支給額を算出してボーナスを支給しているが、2024年1月は半導体部門のみ業績悪化を理由に成果給が支給されず、半導体(DS)部門従業員が不満を募らせていた。
そうした流れもあり、2023年末には、労組加入者は1万人程度であったものが、6月の同社初のストライキの実施までに半導体部門の従業員を中心に加入者数は2万人を超え、7月の今回の第2回目となるストライキの実施までに3万人を超えるなど、急速に組織率を上昇させている。
同労組は会社に対して、労使協議で決定された賃金引上げ率を超える大幅な賃金引き上げ、成果給制度の改編、有給休暇の拡大などを要求事項として掲げているが、会社側は要求に応じていない。
Samsungは、半導体製造の工程の大半は自動化されており、生産に支障は出ていないとメディアに説明しているが、労組側は、いくら自動化しても装置監視や保守、故障修理には人手が必要であり、生産に支障が出ているとする主張を述べている。労組幹部は「会社側が要求に応じなければ、今後もストライキを行うつもりだ」と強気の姿勢をみせており、10日に交渉が決裂した場合、次は7月15日からの5日間、その次は無期限ストを実行すると宣言している。
Samsungは、創業者の李秉喆(イビョンチョル)氏の方針で手厚い報酬を支給する代わりに労組結成を認めていなかった。2代目の李健熙(イゴンヒ)氏もそれを踏襲していたが、韓国の文在寅(ムンジェイン)前政権が労働者の権利を保護する法整備を進める中で、3代目の李在鎔(イジェヨン)氏の贈賄疑惑や不正蓄財などに対する世論の批判の高まりを受ける形で、同社は2020年に無労組経営と決別せざるを得なくなり、労働組合が結成されるようになった。韓国の半導体業界の中からは同社で相次ぐストライキは、同社が労働組合とは無縁の猛烈エリート集団から普通の会社に変身したとみる向きも出ている。