Security Affairsは7月8日(現地時間)、「Apple removed 25 VPN apps from the App Store in Russia」において、Appleがロシア連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁(略称:Roskomnadzor)の要請に応じて複数のVPN(Virtual Private Network)アプリをロシアのApp Storeから削除したと報じた。
ロシアの情報統制の一環
ロシア当局は情報統制の一環として、古くからメディアの活動やアクセスを制限している。これまで外国メディアや独立系メディアへのアクセスが厳しく制限されてきたが、最近ではFacebookやInstagramへのアクセスも禁止している。
しかしながら、ロシア市民はこのような状況を甘んじて受け入れているわけではない。一部の市民は自由な情報へのアクセスを求めてVPNを活用している。VPNを使用すると通信先、通信内容を秘匿できるため、当局の目を逃れて外国から情報を収集することができる。
そのため、多くのロシア市民がVPNに唯一の希望を寄せていたが、今回のAppleの処置によりアプリ自体を利用できなくなった。Apple以外のプラットフォームを利用できるユーザーは回避できるが、一部のユーザーはVPNを利用できなくなり、情報を遮断された可能性がある。
なお、Appleはこの件について、ロシア領内におけるロシアの法律に沿った取り組みとして、自らの行動の正当性を主張している。
削除されたVPNアプリ
今回削除が確認されたVPNアプリには、Red Shield VPN、Le VPN、hidemy.name VPN、Proton VPN、NordVPNが含まれるとされる。Red Shield VPNは7月4日(現地時間)、この件について次のように声明を発表し、Appleの行動を非難した(参考:「Red Shield VPN - Apple removed our application from the Russian AppStore due to a request from the authorities. Our statement.」)。
ロシア市場からの収益を維持したいAppleの行動は、(ロシアの)権威主義を積極的に支持している。これは単なる(利益至上主義の)見境ない行為ではなく、市民生活に対する犯罪だ。ロシアの国内総生産(GDP: Gross Domestic Product)よりも多くの資本を持つ企業が権威主義を支持するという事実は、その企業風土について多くを物語っている。
Le VPNも同日、同様の声明を発表してAppleの行動を非難している(参考:「Le VPN App Removed from Russian App Store Following Roskomnadzor Demand - Le VPN」)。また、7月6日(米国時間)、「Petition · Apple helps Putin's censorship. We demand that Apple unblock VPN apps. - Austria · Change.org」においてAppleの行動に異議を唱える署名活動を開始した。Le VPNはAppleに対し、署名を通じて言論抑圧支援の停止とVPNアプリの削除撤回を要求している。
Le VPNの回避策
Le VPNはアプリ削除の当日、このような事態を想定していたとして、影響を受けたユーザー向けに「Le VPN Give」をリリースした(参考:「Le VPN Launches Alternative Service in Response to Removal from Russian App Store - Le VPN」)。Le VPN Giveは専用ソフトウェアと難読化されたVPN接続により無料で安全なインターネットアクセスが可能とされる。