通信業界は、企業、消費者、テクノロジーのニーズの変化によって常に進化している。2023年、世界中の企業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)の旅の途中だった。2024年は2023年の重要な動向がデジタル・トランスフォーメーションの展望を形作ることになりそうだ。
これらの動向は、企業や組織がどのようにテクノロジーを活用し、イノベーションを起こし、競争力を維持し、顧客や市場の進化する要求に応えていくかに影響を与えるだろう。私達がこの変化を続ける環境で成功するには、運営モデル、コミュニケーション・チャネル、サービス・プロバイダーの期待を継続的に見直していかなければならない。
世界中の企業や組織は、仕事のあり方を見直し、事業継続性を確保するため、リモートワークを取り入れている。この働き方の変化は、リモートチームを支援するシームレスなコミュニケーションと、効果的なコラボレーションの重要な役割を浮き彫りにした。
リモートワークの導入が拡大する中、通信プロバイダーは、チーム間の社内コラボレーションを促進するインテリジェントな機能を導入することで、自社のサービスを向上させる必要がある。
通信業務を変革させるAI
通信分野は現在、AIの能力に後押しされた顕著な変化を経験している。
2024年度中に、AIアルゴリズムは通信業務のさまざまな側面で統合され、ネットワークの効率を高め、メンテナンスの必要性を予測し、顧客サポートサービスを変革するだろう。AIを活用したソリューションは、ネットワークのパフォーマンスを最適化し、サービスの中断を予測し、予防的なメンテナンス・ソリューションを提供する上で極めて重要な役割を果たすだろう。
また、2024年はハイパー・オートメーションの登場によって、人々の期待はかつてないレベルにまで高まるだろう。ハイパー・オートメーションを活用することで、組織は最大30%の大幅なコスト削減を達成することができるからだ。
この革新的な傾向は、RPAをAIや機械学習に統合し、複雑なビジネスプロセスを合理化して効率性と精度を高める。企業・組織はAI主導の意思決定プロセスへと軸足を移し、データ分析を活用することで、より迅速で十分な情報に基づいた選択を容易にすることが出来る。
顧客体験の変化
そして、AIを提供する企業は、シームレスで効率的なやり取りの提供を目指し、自動化された顧客サービス・ソリューションに多額の投資を行っている。
iSharesによると、その70%が2024年度中にAI投資へのリソースを増やす予定となっている。顧客との対話にとどまらず、AIの影響力はネットワークの最適化、予知保全、会話型インテリジェンスなど、幅広い分野に及ぶだろう。
しかし、顧客体験を最適化するには、人間との対話とAIとの対話のバランスを取ることが極めて重要である。バーチャルアシスタント、チャットボット、会話型AIプラットフォームは、企業のデジタルインフラを変革し、顧客との関係を再定義する上で極めて重要な役割を果たすだろう。企業は、業務を合理化し、効率を高め、コア・コンピタンスに集中する為に、AIの導入に最も適した分野を特定する必要がある。
接続の可能性を高める5G
通信市場で話題になっているトレンドの一つに、5G技術の普及がある。5Gは以前から注目されていたいたが、信頼性の高い接続性とより優れた帯域幅に対するニーズは、ここ数年でさらに高まっている。
5Gの普及は通信市場に大きな影響を与え、新たなアプリケーションやサービスを可能にし、サービスが行き届いていない地域への接続性を拡大すると期待されている。
加えて、IoTは人々の生活の質を向上させ、企業の利益を増大させ、経営を改善する。接続されたIoTデバイスの数は、5G技術により、世界で16%増の167億に達する。5Gは、今後数年間でネットワークに接続すると予想される膨大な数のIoTデバイスをサポートするために、必要な帯域幅と低遅延を提供する。
データの整合性とサイバーセキュリティ
通信ソリューション・プロバイダーがオープン・テクノロジーとクラウド・コンピューティングの採用を増やす中、データの整合性とサイバーセキュリティは引き続き最重要課題となると思われる。
さらに、IoTの台頭は、サイバー犯罪者が安全ではないデバイスを悪用して攻撃を仕掛ける新たな手段を生み出した。世界中の接続を維持する業界として、通信事業者は大量の個人データを扱っている。この特性が、サイバー攻撃、特にハッキングやスパム行為にとって魅力的なのだ。
2024年、通信会社は、特にブロックチェーン技術に重点を置いて、セキュリティ投資を大幅に強化するだろう。
ブロックチェーン技術は、顧客体験の向上、契約管理のセキュリティ強化、ID管理の強化に有効であることが証明されている。ブロックチェーンの非中央集権的で改ざん不可能な性質は、機密データを保護し、サイバー攻撃から守るための強固な枠組みを提供する。
SASE(セキュア・アクセス・サービス・エッジ)は2024年、企業にとって好ましいセキュリティ・フレームワークとして支持を集めている。リモートワーク、クラウドの導入、エッジ・コンピューティングを推進力とするSASEは、ゼロトラストを原則として高度な脅威防御を統合し、データと資産を保護するものとなっている。
また、簡素化された導入と価格設定モデルにより、SASEはあらゆる規模の組織にとって利用しやすいソリューションといえる。SASEソリューションは、今年も採用が拡大しそうだ。
Gartnerの予測によると、2018年にはSASE導入の戦略を持つ企業がわずか1%だったのに対し、2024年にはそうした企業が40%を超えるという。リモートワークが常態化し、クラウドベースのアプリケーションが普及するにつれ、SASEは最新のネットワーク・アーキテクチャの安全性を確保するため、さらに重要になると考えられる。
2024年以降に来る大きな変革期
通信業界は2024年以降、大きな変革期を迎える。俊敏性、革新性、安全性を取り入れることで、通信プロバイダーはこのダイナミックな環境において成功することができる。
変化する需要に絶えず適応し、斬新なソリューションを開発し、サイバーセキュリティを優先させることで、通信事業者はコネクティビティ(接続性)の未来を形成し、繁栄するデジタル経済を実現する上で極めて重要な役割を果たし続けるだろう。
2024年の予測は、過去数年間にわたって観察してきたパターンを基礎としている。2023年に現れたトレンドは、2024年に向けてこの業界が変貌を遂げるための土台を築いている。
2024年のビジネス環境は、破壊的な勢力の強力な収束に後押しされ、大きな変容を遂げるだろう。比類なき創造力と問題解決能力を備えた生成AIは、これまで隠されていた効率性を解き放つだろう。
持続可能性は、一過性のトレンドから本質的なパラダイムへと進化している。AIモデル開発は、意思決定プロセスにおける基本原則としての持続可能性これまで以上に優先させ、エネルギーや素材などの資源利用を最適化する。
DXは、目的地ではなく進行中の知的探究の旅であり、2023年を画期的な革新の年に押し上げた、画期的なトレンドに後押しされている。こうした変革の力は、2024年も間違いなく、私達の世界を驚くべき方法で再構築し続けるだろう。
2024年は、企業や組織にとって課題と機会の両方をもたらす。企業や組織は、このような進化を遂げつつある情勢を導く一方で、このよううな変革的予測を受け入れ、持続的な成長と成功への道を切り開くための戦略を適応させなければならない。