あしたのチームは7月5日、国内中小企業の組織課題や実態の把握を目的に実施した「中小企業で働く20代のキャリア形成に関する意識調査」の結果を公表した。現在の職場でキャリアビジョンが見えていないと感じる人は60%以上で、キャリアの参考となる先輩社員や上司がいないと答えた人は全体の30%であった。
調査によると、20代の社員のうち、現在の会社で数年先のキャリアビジョンがほとんど見えていないと感じる人が32.0%、「まったく見えていない」と答えた人が28.3%と、あわせて6割以上の社員が将来のキャリアについて不透明さを感じていた。一方で、「はっきり見えている」人はわずか6.3%であり、「ぼんやりと見えている」と回答した人を含めても、キャリアビジョンを見据えて働けている社員は全体の39.6%にとどまった。
自身のキャリアビジョンが見えていない理由の 1位は「自身のライフプランが見えないから」(28.7%)と、個人のライフイベントを考慮したキャリア設計が重要視されている傾向があり、男性よりも女性の間でこの理由がより多い(男性 23.8%、女性 32.7%)。次に多かった理由は「先輩社員や上司を見て希望が持てないから」(24.9%)で、先輩や上司の姿を見て会社での将来に不安を感じる人が多いことが示された。続いて「キャリアについて相談できる相手がいないから」(22.1%)や、「自社のキャリアパスが公開されていないから」(20.4%)など、キャリアビジョンを描くための情報不足が課題として挙がっている。
自身のキャリアビジョンが明確である人が、その形成に役立った要因では、「上司との面談」が32.8%で最多。上司との相談や助言を通じて、自身のキャリアの可能性や選択肢を見出せたことが示された。2位は立場や境遇の近い同僚の話(26.9%)、3位は社内研修(26.1%)であった。
また、社内にキャリアの参考や目標にできる先輩社員や上司がどのくらいいるか聞いた結果、「1人もいない」30.0%が最多となり、20代の社員の約3人に1人が社内に参考や目標になる先輩社員や上司がいないと感じていることが明らかになった。特に自身のキャリアビジョンが見えていないと回答した人の中では、この割合が44.2%に上昇している。また、キャリアビジョンが見えている人に比べて、参考や目標になる先輩社員や上司が少ない傾向がある。
これまでの設問で20代のキャリアビジョンの前提として「自身のライフプラン」があること、生き方・働き方のダイバーシティが世間に広まって以降の社会人世代であることなどから考えると、社内の“ロールモデル”はもはや機能しておらず、生き方に憧れたり共感したりするような存在はSNSなどの社外にいて、社内には求めていないことが考えられるという。
勤務先のキャリア形成に役立つ制度や体制が整備されているかどうかについて、自身のキャリアビジョンが明確である人々のうち、約7割が整備されていると感じている一方で、キャリアビジョンが見えていない人々の約8割が、制度や体制の整備が不十分だと感じているようだ。
また、勤務先のキャリア形成に満足しているかについて聞くと、特に「キャリアビジョンを描くのに役立ったもの・こと」として最も多かったのは「上司との面談」であった。会社風土や普段のコミュニケーションによる上司との心理的距離の近さのほか、人事考課のタイミングなど定期的な面談機会があることで、キャリアについても上司に相談しやすい環境がつくられていることがわかった。また、研修や資格取得の支援、給与決定方法についても具体的な取り組みや基準が評価され、社員のリスキリングや給与面での満足度が高いことが示された。
あしたのチーム 代表取締役社長 CEOの赤羽博行氏は、次のようにコメントしている。『かつて、若い会社員は「あの先輩のように仕事ができるようになりたい」とか「上司の年齢になる頃には自分も同じようにクルマを買 いたい」などと、会社で活躍する先輩に憧れ、それにならって将来の目標を想い描くことがよくあったように思います。今回の調査で「20 代社員がキャリアの参考や目標にしたいと思う先輩や上司が社内に『1人もいない』が最多」とは、少々寂しく感じます。しかし、これは必ずしも“社内にかっこいい先輩がいない”ということではありません。20代社員は多様な価値観を尊重することが当たり前で育った世代であり、また働き方や生活の価値観はコロナ禍前後でも大きく転換しているくらいなので、先輩や上司の時代とはキャリアに関しての前提が違い過ぎて参考にならないというのは当然のことです。』
『これから企業側に求められることは、社員一人ひとりのキャリアに対する考え方や希望に向き合えるキャリア支援ができる管理職を育成すること、面談の頻度を高めていくことを通じて、管理職が部下の成長を支援し、市場価値を上げていくことです。今後更に人手不足が加速していく中、人材を確保して企業成長するためには「ここで働きたい」と思ってもらえるようにキャリア支援ができること、個人の成長機会を提供するための人事の仕組みづくりが不可欠ではないでしょうか。』