情報処理推進機構(IPA)は7月4日、企業・組織の実務担当者を対象に、AIの業務利用の浸透具合やセキュリティ上の脅威・リスクの認識に関する調査を3月18日~21日の期間実施し、その結果を公表した。
現在所属する組織において、業務でのAI利用あるいは職員の業務でのAI利用許可をしているか尋ねると、3月時点で業務でAIを「利用/許可している」のは16.2%、「予定あり」を合わせても22.5%とまだ十分浸透はしていない一方で、個々のサービスを見る利用が加速していることがうかがえるという。
業種共通的に利用可能なサービスから利用が進み、なかでもチャット・質問回答といった顧客向けサービス改善に有効と考えられるAIサービスの利用が先行、社内業務効率化に有効と考えられる翻訳や文案作成などのサービスが続く。業種・業務の専門性が必要と考えられるサービスも含むすべてのカテゴリにおいて、2023年だけでそれ以前と同程度に利用率が増加しており、今後はさらに利用が加速すると考えられるという。
導入率の高いサービスの業種別利用状況では「チャット・質問回答サービス」が1位で、特に通信業、サービス業で導入が進んでいる。第2位は「翻訳サービス」で、2023年より前から導入され、その他の業種を除くと導入率に業種の差はあまりない
AIのセキュリティに関する脅威の度合いを尋ねると、回答者の約6割はAIのセキュリティに関して脅威を感じていることが判明。AIの導入・利用可否におけるセキュリティ対策は重要であるという回答者は分類AI、生成AIともに7割を超えた。
AIの導入・利用可否に重要な項目について尋ねると、セキュリティやプライバシーに関する項目は上位にあり、特に、セキュリティ対策が「非常に重要だと思う」と回答している人は生成AI(45.3%)、分類AI(42.2%)とともに最も多い。AIの導入・利用検討において、AIシステムの堅牢性や個人情報の適切な取り扱いを重要と考えていることが明らかになった。
生成AI利用時のセキュリティに関連した規則・体制は整備されているか調査すると、課題認識は60%を超えていたにも関わらず、規則の策定、明文化、組織的な検討がされているのは 20%未満。詳細規則策定中を合わせても40%前後しか整備が進んでいなかった。
生成AIの利用、普及において事業に影響するほど大きい課題について、「非常に大きな課題である」、「やや課題だと思う」を合わせた結果、最も多いのは詐欺による金銭被害・情報流出であったが、いずれの事象も60%以上が課題と考えており差は小さかった。
また、まだAIを利用/許可しておらず、導入予定もない人に対してその理由を尋ねると、AIを利用する環境が整っていないことが、利用/許可しないことの一番の要因であった。また、セキュリティや安全に対するリスクを懸念するとの回答が4分の1程度あった。
「ITを活用できていない」「エキスパートがいない」は規模によらず利用促進阻害となっているが、特に中小規模の方が大きな課題となっている。大規模では「安全性リスク」「セキュリティ・プライバシーリスク」が続く要因に挙がった。