我々の身近にあり、食器洗いの必需品であるキッチンスポンジ。そんなキッチンスポンジにはさまざまなサイエンスが詰まっているという。そんなサイエンスの塊であるキッチンスポンジの製造・販売を手掛ける3Mの日本法人であるスリーエム ジャパンが、キッチンスポンジのリサイクルに関する取り組みについての説明会とキッチンスポンジにまつわるトークセッションを開催。サイエンスとしての視点を踏まえたキッチンスポンジの効率的な使い方を通じたサステナブルな社会の実現に向けた道筋を示した。

キッチンスポンジの正しい使い方と秘められた3つのサイエンス

皆さんはキッチンスポンジを使うとき、例えば2層式のようなざらざらとした硬い面と、ふわふわとした柔らかい面がある場合、どちらを食器を洗う際に使うだろうか?

筆者は食器に傷がつきそうだと感じいつも柔らかい面で洗っていたのだが、これは間違った使い方だという。ここに1つ目のキッチンスポンジのサイエンス、「不織布のサイエンス」が隠されている。不織布とは、織ったり編んだりしないで作られた布で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時に必要性が高まったマスクにも使われている。そのほか研磨材、薬品や油の吸収材、車の吸音材、床掃除用のフロアシートなどさまざまなところで使用されており、3Mでも不織布の技術を多くの製品に活用してきたとする。

では、同じ不織布というカテゴリに括られるキッチンスポンジとマスク。果たしてこれらは同じようにフライパンにこびりついた汚れを落とすことができるのだろうか?

もちろんマスクで、こびりついた汚れを落とすことは難しい。ここでポイントになるのがキッチンスポンジには、繊維が複雑に絡み合った構造がばねのように伸び縮みする「スプリング効果」が採用されているということ。この構造が食器の凹凸部や溝にたまった汚れに繊維が届く仕組みとして働くことになるわけだが、この構造が取り入れられているのが、ざらざらとした硬い面の方となる。

  • マスクとスポンジそれぞれで汚れを落とすデモンストレーション

    マスクとスポンジそれぞれで汚れを落とすデモンストレーション

筆者のように食器に傷をつけたくないと考える人は、2つ目のキッチンスポンジのサイエンスである「研磨剤」と、3つ目のキッチンスポンジのサイエンスである「接着剤」について考えてみると良いという。

研磨剤とは、紙やすりなどに使われている、削ったり磨いたりするための硬い粒や粉のことで、キッチンスポンジのパッケージには通常、研磨材のあり/なしが表記されている。

研磨材ありのキッチンスポンジは、繊維に研磨粒子が接着剤でつけられているため、より頑固な焦げ付き汚れを落とすことができる一方で、研磨材なしのキッチンスポンジはグラスなど、傷つけたくない食器を洗う際に向いているという違いがある。

  • 頑固な焦げ付き汚れも研磨剤ありのスポンジでこすると汚れが落とせる

    頑固な焦げ付き汚れであっても、研磨剤ありのスポンジでこすると汚れが削り落とせる

  • 頑固な焦げ付き汚れを研磨剤なしのスポンジでこすっても汚れはあまり落とせない

    頑固な焦げ付き汚れを研磨剤なしのスポンジでこすっても、汚れは多少は落とせるが、研磨剤ありに比べると汚れは落とせない

このように不織布とスポンジを接着剤で貼り合わせたものがキッチンスポンジであり、不織布(硬い部分)とスポンジ(柔らかい部分)で洗い分けるのではなく、不織布の研磨剤が有無で使い分けるのが正しいキッチンスポンジの使い方だという。

また、キッチンスポンジを長く使うコツとしてスリーエム ジャパンのスポンジ博士こと、ホームケア&コンシューマーヘルスケアマーケット技術部スペシャリストの原井敬氏が教えてくれたのは、“食材や洗剤をしっかり落して、縦に置いておくこと”。通気性がよくなり長持ちするのだという。また、カレーなどの汚れがきついものは、予洗いをしておくのもポイントだとし、毛玉がついたり、穴が開いたりしてきたら交換の時期だと教えてくれた。

  • 毛玉がついたり、穴が開いたら交換時期

    毛玉がついたり、穴が開いたら交換時期

スリーエム ジャパンが進めるキッチンスポンジのリサイクルプログラム

キッチンスポンジを新しいものと交換した際、古いものをそのまま捨ててしまうのはもったいない。そうした思いからスリーエム ジャパンでは2019年7月からテラサイクルジャパンと協働してリサイクルプログラムスコッチ・ブライト スポンジ リサイクルプログラム」をスタート。ブランドやメーカーなど関係なく使用済みのキッチンスポンジや、キッチンスポンジの包装プラスチックパッケージなどを回収する活動を行っている。このリサイクルプログラムは個人でも団体でも参加が可能で、2024年5月末時点で回収拠点登録は約180カ所、スポンジ約200個の重さである2kg以上から回収可能としている(食べかすや、油が染みついたキッチンスポンジは対象にならない点に注意。回収ボックスに投入する前に、よく洗い、十分に乾かしてもらいたいとスリーエム ジャパンとテラサイクルでは呼びかけている)。

スリーエム ジャパンでは今後、学校、公共団体、自治体など多くの人が参加しやすい場所への回収ボックスの設置をはじめ、SNSなども活用しながらスコッチ・ブライト スポンジ リサイクルプログラムの浸透を推進し、循環型経済の推進に貢献していきたいとしている。また、それと並行してリサイクル素材や植物由来の素材を使用し環境に配慮された同社製品シリーズ「スコッチ・ブライト グリーナークリーンシリーズ」のさらなる浸透も目指していきたいとしている。

  • リサイクルボックスに使い終わったキッチンスポンジを入れるお笑いコンビ「マシンガンズ」で活躍する滝沢秀一氏の様子

    リサイクルボックスに使い終わったキッチンスポンジを入れるお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一氏

マシンガンズ滝沢秀一氏が語ったサステナブルな社会の実現方法

後半のトークセッションでは、「環境省サステナビリティ広報大使」の肩書を持ち、お笑いコンビ「マシンガンズ」として活躍する傍らゴミ清掃員としても活動し、ゴミの回収・分別や廃棄物削減についての情報発信などでも知られる滝沢秀一氏が登壇。スポンジ博士の原井敬氏と、サステナビリティを意識することの重要性などを語った。

  • トークセッションにて会話する滝沢秀一氏とスポンジ博士の原井敬氏

    トークセッションにて会話する滝沢秀一氏(左)とスポンジ博士の原井敬氏(右)

滝沢氏は、日本の環境問題に対して「(何かしらの行動をする際に)“何につながっているのかわからない”と感じている人も多いのではないでしょうか。そのため、(社会を動かすには)“何のためにその行動をやっているのか”を示すことが大事だと思います」と語る。

また、どうすればサステナブルな社会になっていくのかについては、「国や企業は個々人の意識が足りないと言うし、個人は国や企業の制度が整っていないと言うし、国も企業も個人もどこか誰かのせいにしていると感じます。なので、すべての人々の歩み寄りが大切だと感じますし、そのためには環境に対する教育を小さいころから受けることも大切だと思います」と語り、そうした環境に対する教育を受けた子供たちが大人になっていくことで、徐々に環境意識をもって生活をすることが当たり前の世の中になるだろうとの考えを示した。

そして最後には、「ゴミと資源は違います。ゴミという言葉がなくなる未来を作りたいですね」と自身の夢を語り、スリーエム ジャパンが推進するリサイクルプログラムの拡大も応援したいと締めくくった。