ミスミは、同社の機械部品調達AIプラットフォーム「meviy」の機能強化として、新たにAIを用いて機械部品の図面データの検索や共有ができる機能「meviy Finder」を8月から無償で順次提供することを7月1日に発表、報道陣に向け説明会を行った。

製造業の生産性向上を阻むアナログの存在

meviyは、機械部品の3D(三次元)データをアップロードするだけで、AIが自動で即時見積もりを行い、独自のデジタル製造システムにより最短1日で部品を出荷してくれるサービス。紙図面の作成時間がなくなるほか、複数社への相見積もりの作業もしなくてよくなるため、短納期での部品調達が実現できる。

こうしたサービスを展開する中、製造業に従事する顧客に対して困りごとに関するアンケート調査を行った結果、「過去図面の検索」「過去の類似品の見積結果の検索」「図面の共有」を望む声が多く挙がったという。

  • 「時間がかかり過ぎていて、効率化したい業務は何ですか?」というアンケート調査の結果

    ミスミが行った「時間がかかり過ぎていて、効率化したい業務は何ですか?」というアンケート調査の結果 (出所:ミスミ)

製造業では、設計→調達→製造→販売という大きな流れがある中で、デジタル化が進みCADやCAEを活用した設計、自動化ロボットによる製造、そしてEコマースを介した販売といった生産性向上が実現しつつあるものの、調達分野においては、3D CADで作ったデータをわざわざ紙図面に落とし込んでから発注を行うという、アナログ的な手法が要求される場合があり、生産性向上のボトルネックになっている。また、過去の図面の多くが紙の状態で保管されているため、探したい図面が過去の取り組みの中で存在していることが分かっていても手作業でそれを探す膨大な作業時間を必要とするといった課題もあるという。

  • 調達領域が生産性向上のボトルネックとなっている

    調達領域が製造業の生産性向上におけるボトルネックとなっている (出所:ミスミ)

現場の声から生み出された「meviy Finder」

そこで同社は、そうした調達部分にまつわる課題の解決や生産性向上に貢献することを目的にmeviy Finderを開発したと説明している。

meviy Finderは、2D(二次元)の図面データをアップロードするだけで、AIが図面に記載されている情報を自動で認識・解析し、図面の番号や部品名称、材質、各処理方法、外形サイズ、寸法公差、表面性状などを項目ごとに構造化した後、自動的に登録してくれるサービス。アップロードする際は、どのようなファイル形式でも対応可能で、ユーザーが何かしらの前処理をする必要はないとのこと。

  • 認識結果を自動で構造化して蓄積してくれる

    認識結果を自動で構造化して蓄積してくれる (出所:ミスミ)

これらの情報が蓄えられることで、ユーザーはキーワードを入力するだけで探したい図面データを検索できるようになるほか、同社が保有する膨大な商品情報や図面情報などから検索したい図面に類似するデータをAIが類似度をパーセンテージで示して表示してくれるため、1つ1つファイルを開かずとも図面の類似検索も可能。また、図面データを設備、製造、保全、購買などの各部署間で共有できるため、各部署間での図面の問い合わせの手間を減らすこともできるという。

meviy Finderの大きな特長としては、無償で提供されることはもちろん、同社が保有する良質で膨大な教師データで学習したAIが搭載されているという点や外形サイズなどの図面を認識する精度の高さにあるとする。

今回は顧客の困りごとである紙図面に着目したため2Dから製作したが、今後はmeviyの技術である3D形状認識AIや3DViewerを応用することで3Dの図面データにも対応することを予定しているほか、meviyの見積もり機能と連携し短納期のうちに発注から納品までできるような仕組みを構築していきたいとしていた。

また、meviy Finderにおいても、meviy同様無償で提供を行うことに対して、説明会に登壇した同社 常務執行役員 ID企業体社長の吉田光伸氏は、「製造業全体を良くしていきたいと考えており、これを機にmeviyのことやミスミのことを知ってもらい、好きになってもらえると嬉しい」と述べ、同サービスに対する売上目標などはなく、あくまで業務効率化のサービスとして無償提供を行っていくとした。

  • 吉田光伸氏

    ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長の吉田光伸氏

このほか、同社 meviy Lab ジェネラルマネージャーの芝田篤史氏は、「我々には製造業の社会インフラとしての使命があると認識している。ユーザーが抱えている困りごとを聞いていく中で、meviyの中にそうした悩み事を解決できる技術があるのに、提供しないのはもったいないと考え無償提供するに至った」と無償で提供することに至った背景を説明。いくら業務効率が向上するサービスが開発されてもコスト面が導入の障壁となり、デジタル化が進まない現状があるという現場の声に耳を傾けるミスミだからこそできることである点を強調していた。

  • 芝田篤史氏

    meviy Lab ジェネラルマネージャーの芝田篤史氏

なお、meviy Finderは8月より順次提供が開始され、利用するにはメールアドレスの登録が必要だという。