水産庁は6月11日、商業捕鯨の対象にナガスクジラを追加し、今年の捕獲枠として59頭という上限を決めた。現在、ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラの3種類が許可されている。これで4種類目となるが、シロナガスクジラに次ぐ大きさで、今後、国内外から反発する声が強まる可能性がある。ナガスクジラは20メートルほどの大きさで、水産庁によると最大で80トンほどになる。
調査捕鯨に対する批判が海外から強まり、日本政府は2019年6月に国際捕鯨委員会(IWC)を脱会した。翌年から、日本の排他的経済水域でミンク、ニタリ、イワシの商業捕鯨を始めた。ただ、その後も鯨肉需要は伸びず、鯨肉の生産量は年間2千トンほどで推移してきた。
水産庁によると、昭和30年~40年代には20万トン前後の鯨肉を生産していたという。
そんな中で、共同船舶(東京)が今春、新しい捕鯨母船の関鯨丸による操業を始めた。全長112メートルの大型船で、建設費は75億円。同社は「日本の消費者に鯨肉の供給を続ける」と意欲を見せ、ナガスクジラの追加の捕獲対象にすることを水産庁に求めていた。
水産庁は今回の追加指定について、共同船舶との関係を否定。あくまで資源調査の結果と強調する。目視による資源調査では、オホーツク海や北西太平洋などで54万頭以上のナガスクジラが生息すると推定した。
今回、シミュレーションなどを実施し、水産庁は「100年間捕獲を続けても資源に悪影響がないことを確認した」と説明している。
しかし、専門家などによると、海外の捕鯨団体や日本国内の動物愛護団体が今回の動きに注目しているという。
「鯨類の持続的な利用の確保に関する法律」では、鯨は貴重な食料資源であり、伝統的な食文化だと定めている。商業捕鯨が持続的かつ自立的に営まれるよう、今後、どうやって日本人に鯨肉を食べてもらうのかが大きな鍵になりそうだ。