政府が2025年度の予算編成を見据え、今月の閣議決定を目指す経済財政運営の基本指針「骨太の方針」で、医療や介護分野の負担増につながる項目の記載を見送る公算が大きくなっている。
骨太の方針では例年、社会保障施策の給付と負担の見直しの方向性が盛り込まれる。しかし、今秋から5年に1度の公的年金の制度改正の議論が控えていることや、岸田政権の求心力が弱まっていることから、「医療や介護の負担増に関する議論はしにくい」(自民党厚労関係議員)との声がもっぱらだ。
今回の骨太の方針の社会保障分野には、持続可能な制度の構築に向け、能力に応じ全ての世代が支え合う「全世代型社会保障」の構築を目指す方向性を盛り込む。「医療や介護分野で現役世代の負担上昇の抑制を図る」という方針も打ち出している。
実現させるには高所得者や高齢者に負担増を求める制度改正を講じるしかないのだが、関連法案は「26年の通常国会への提出を目指す」としている。つまり、24年度中は医療・介護の負担増論議を封印するとも解釈できる。
その背景には医療・介護以上に大きな負担増になりかねない年金制度改正の議論が控えていることがある。今回の年金改正は低年金対策が主要テーマの一つ。40~50代の「就職氷河期世代」が将来的に低年金に陥らないよう給付額を底上げする案を検討する。
給付増の一方で年金保険料を負担する期間の5年延長や、年金給付に充てる国庫負担分を補てんするための増税を検討する必要がある。厚生労働省幹部は「物価高が進行する中、年金額アップのためとはいえ、保険料や税金の負担増を求めるのは非常に厳しい」と漏らす。
こうした国民的な難題を乗り越えるには政権の強いリーダーシップが欠かせない。ところが岸田政権は裏金問題などで支持率が低迷。選挙で有権者の反発を買う負担増の議論には党内からも異論が出そうで、先の厚労省幹部は「低年金対策は議論しても先送りされそうだ」とぼやいている。