米国政府は、先端半導体メーカー向け材料およびプロセスソリューションの主要サプライヤである米Entegrisに対し、CHIPS and Science法(CHIPS法)に基づき、最大7500万ドルを支給すると発表した。
コロラド州の新工場で1100人の雇用を創出、研究開発も拡充
Entegrisへの今回の資金提供は、米コロラド州コロラド スプリングスにある同社の先端製造工場の建設を支援することを目的としたもの。工場建設は複数のフェーズが計画されており、第1フェーズではFOUP(300mmウェハ収納密閉容器。現在は米国以外でのみ製造されている) と液体フィルターメンブレンの製造を支援、第2フェーズでは高度な液体フィルターと液体精製システム、および流体処理ソリューションなど残りの製造を支援するという。
すでに工場の建設自体はCHIPS法による補助金を前提に2023年より開始されており、製造工程に加え、2030年までに米国での研究開発能力を拡大することにも政府に約束している。米商務省では、この資金援助で、Entegrisはコロラドスプリングスにて、500人の建設労働者および600人の直接雇用労働者の雇用を創出するとしている。
また、同社のFOUPが過去20年にわたって半導体の製造を向上させ、Intel、TSMC、Micron、GlobalFoundriesなど、主要なチップメーカーがその主要顧客となっていることを商務省では高く評価しているとするほか、Entegrisの製造プロセスにおける汚染制御と処理化学物質の精製に手掛ける役立つ高度なメンブレン、ケミカルフィルター、化学薬品貯蔵ドラムなども、半導体技術の進化に併せて、需要が急速に増加していく見込みだともしている。
商務省が補助金支給に併せて人材育成などを要求
また、この補助金支給に伴い、Entegrisはコロラドスプリングスとマウンテンウェスト地域における大学や教育機関と人材育成に協力し、自立したエコシステムの構築を目指すこととなるほか、Hiring our Heroes、Mt. Carmel Veterans Service Center、SEMI Veteran Foundation、および地元の軍事基地との提携を通じて、プロジェクト全体の労働力の50%を退役軍人と軍人の家族から採用することを目指し、このプロジェクトをMilitary Center of Excellenceとして指定する予定としている。
さらに、Entegrisによれば、持続可能性を重視した施設の建設と運営が求められており、温室効果ガスの排出量削減ならびに水の回収・リサイクル度合いの向上などが図られる予定だという。
なお、Entegrisは、日本の米沢市に2工場、中国や韓国、台湾、欧州なども工場を有しており、分担して製品の製造を行っているが、米国の国家安全保障確保のためのサプライチェーン強靭化に向けて、商務省は補助金支給と引き換えに、今後は米国本土でFOUPを含む全製品の製造を要求している模様で、米国メディアの報道によると、米国政府は、Entegrisに対して数百万ドル相当の先端半導体製造用部材のSMICへの輸出を差し止めを求めており、今後、Entegrisの先端部材の中国への輸出が厳しくなることが予想される。
CHIPS法に基づく米国政府からの補助金支給が続々と決まっていることもあり、予定総額が埋まってきていることもあり、少額の投資決定が続いている状況となっており、NSTC(米国国立半導体技術センター)への資金提供もまだ行われていない。