発電設備を海に浮かべる浮体式洋上風力発電の実用化に向けて、秋田県南部沖と愛知県田原市・豊橋市沖での実証事業の実施が決まった。脱炭素化につながる技術の開発を支援する経済産業省の事業の一環で、約850億円を充てる。期間は2030年度まで。世界最大級の風車を使い、コスト低減や大量導入のための技術確立を目指す。
秋田では丸紅の洋上風力子会社が率いる企業連合が、愛知は中部電力の関連企業を中心とした企業連合がそれぞれ事業者に選定された。出力1万5000キロワット超の大型風車を秋田に2基、愛知に1基設置する。
政府は洋上風力について、30年度に原発5~6基分に相当する570万キロワットの稼働を目標に掲げている。現在は設備を海底に固定する着床式が普及しているが、日本は設備を置ける遠浅の海が限られている。再生可能エネルギーの導入拡大には、より深い海でも建設でき、大規模化が見込める浮体式の技術開発が欠かせない。
民間の動きも加速しており、3月には電力会社や商社、通信会社など14社が、基盤技術の共同開発を進めるための新組織「浮体式洋上風力技術研究組合」を設立したと発表した。
関西電力などの電力大手のほか、NTTアノードエナジーや東京電力リニューアブルパワーといった再生可能エネルギー会社が参画する。風車を浮かせる土台部分の設計の統一化や深海での送電技術の開発などを進め、コスト低減や世界標準となる規格の確立で国内産業の創出を目指す。
脱炭素化の進展のため、政府は浮体式洋上風力に加え、フィルムのように軽くて折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」の実用化や水素製造装置の導入拡大を後押ししている。24年度予算にはサプライチェーン(供給網)の構築支援に548億円を計上。設備投資には今後10年間で1兆円規模の支援を行う方針を決めている。