政府が6月11日に提示した2025年の経済財政運営の指針「骨太方針」では、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を「視野に入る状況」とし、「経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に大きく前へ進める必要がある」と強調した。
一方、歳出改革の数値目標は明記しなかった。同日の閣議後会見で、鈴木俊一財務相は財政の国際的な信認を保つためには「健全化に向けた努力が重要」と述べたが、具体的な削減計画が盛り込まれず、今回も「先送りされた」(財務省主計局)形となった。
鈴木氏は財政運営を巡り、26年度以降は「現時点で予断を持って申し上げることはできない」とし、「中長期的な財政の持続可能性への信認を確保するには、経済成長を着実に実現していく中で、財政健全化に向けた努力を継続していく」と語った。
骨太方針には25~30年度の6カ年の「経済・財政新生計画」を策定する方針を示したが、経済成長と財政健全化の両立に向けた道筋には不透明感が漂う。円安の長期化や、日銀の政策転換に伴う金利上昇で家計の負担は増える見通しで、歳出改革の実行は厳しさを増すのは必至だ。
一方で、財務省幹部は「『新生計画』と文言を入れて布石は打った」と話す。
というのも、岸田文雄政権の支持率は低迷したままで、自民党総裁の任期満了を受けた9月の総裁選で岸田首相の再選に黄信号が灯っている。自民内では財政規律を重視する向きが優勢なものの、国民受けしない歳出改革に「ポスト岸田」が着手できるかは見通せない。
6カ年の計画は「経済・財政」とし、経済の2文字を入れて、成長にも目配せをする方針を示したことで「党内積極財政派の不満をかわした」(同省)というわけだ。
ただ、岸田首相の経済政策は事実上、財務省が主導しているが、少子化対策や定額減税などは批判を招き、支持率回復につながっていない。
閣議決定される骨太方針をテコに「ステルス作戦」(主計局)で歳出改革に本格着手しようとする財務省の思惑通りに進むかは予断を許さない。