Appleは、App Storeで公開されるサードパーティー製アプリについて厳しい審査基準を設けており、それがしばしば社会的な問題として論じられることがある。The Vergeが「Apple says no to PC emulators on iOS」で伝えたところによると、Appleは最近、2つのiOS向けのPCエミュレーターアプリの登録申請を拒否したという。2つのアプリの何が問題だったのだろうか。
争点はレトロゲームエミュレーターか否か
拒否されたアプリとして名前が挙がっているのは、DOSエミュレーターの新バージョンである「iDOS 3」、WindowsなどのOSをエミュレートできる「UTM SE」の2つ。いずれもAppleが定める「App Review ガイドライン」の第4.7項への違反とされている。
同ガイドラインでは、iOSにおいてレトロゲームのコンソールエミュレーターアプリを提供することは許容されている。iDOS 3とUTM SEは、いずれもDOS用ゲームの実行環境として利用できることから、レトロゲームエミュレーターだと主張できなくもない。しかし、Appleはこれらをガイドラインが許容するレトロゲームのエミュレーターの範囲から逸脱していると判断したようだ。
App Storeにおける判断基準を明確にしていないApple
The Vergeは、AppleがApp Storeでの判断基準を明確にしていないことが問題と指摘している。このケースでは、何がレトロゲームにあたるのかという基準が明らかにされず、開発者が自分のアプリを改善するための情報が与えられていない。
もともと、Appleがレトロゲームエミュレーターを許容するようになったのはつい最近のことである。この方針の変更は、米国で行われている反トラスト法訴訟に対応するためとされている(関連記事:Apple、レトロゲーム機のエミュレータアプリにApp Storeを開放 | TECH+(テックプラス))。
Appleは欧州でも、デジタル市場法が定める「ゲートキーパー」に指定され、App Storeによる独占的な状況を改善するように求められている。折りしも2024年6月24日、欧州委員会はAppleに対してデジタル市場法違反への予備的な認定を行っており、Appleはさらなる対応を余儀なくされている(関連記事:「AppleはDMA違反」欧州委員会が予備的見解を発表、巨額制裁の恐れも | TECH+(テックプラス))。