畿央大学は6月27日、疲労感・身体機能低下は共にフレイル、要介護、死亡などと関連が強く、スクリーニングに重要な評価になるが、疲労感と身体機能低下との関係や、年齢と性別がこれらの関係に及ぼす交互作用効果について、十分に明らかにされていなかったため、疲労感(過去1週間)と身体機能低下について調査・分析した結果、疲労感は、通常歩行速度、握力、立ち上がりテストの低下と関連したが、膝伸展筋力や最大酸素摂取量とは関連しなかったこと、ならびに年齢と性別の交互作用効果について、疲労感が強いほど歩行速度が遅くなるという関連が、高齢でより強く認められたことを発表した。

同成果は、畿央大 理学療法学科の松本大輔准教授(2023年4月からの1年間は仏・トゥールーズ大学病院 老年科/同病院 加齢研究所に在外研究員として活動)らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、国際フレイルサルコペニア学会の刊行する老化と加齢に関する全般を扱う公式学術誌「The Journal of Frailty & Aging」に掲載された。

近年、高齢者の健康に関して、健康な状態と要介護状態の中間の段階を指す「フレイル」という言葉がよく使われるようになっているが、大別して身体的、精神・心理的、社会的の3種類が知られている。身体的フレイルの中には、筋肉が衰える「サルコペニア」や、運動器の障害で移動機能が低下する「ロコモティブシンドローム」などが含まれ、年齢を重ねると自然と筋力は低下していくことから、フレイルの中でも比較的起きやすいと考えられている。

また、このフレイルに加え、要介護や死亡などとも関連が強いのが、身体機能の低下に加えて疲労感だという。こうした身体機能の低下や疲労感は、フレイルかどうかのスクリーニングの際にも重要な評価になるとされているが、身体機能の低下と疲労感の関係、ならびに年齢と性別がこれらの関係に及ぼす交互作用効果については、よく分かっていなかったという。そこで研究チームは今回、トゥールーズ大学病院において実施された、トゥールーズ近郊に在住し、「INSPIRE-T コホート」研究に参加した916人(20~100歳)を対象に、疲労感(過去1週間)と身体機能低下についての調査・分析を行うことにしたとする。

その結果、疲労感は、通常歩行速度、握力、立ち上がりテストの低下と関連していることが示されたとする一方、膝伸展筋力や最大酸素摂取量とは関連しないことも示されたとする。また、年齢と性別の交互作用効果について、疲労感が強いほど歩行速度が遅くなるという関連が、高齢者においてより強く認められたともするが、それ以外は、年齢・性別による関連の違いは認められなかったとしている。

今回の研究について研究チームでは、多世代でかつ多様な身体機能評価を用いて、身体機能低下と疲労の関連と年齢・性別の交互作用を検討した数少ない研究だとしており、今回の疲労感が強いほど歩行速度が遅くなるという関連が、高齢でより強くなるという関係性については、疲労や歩行速度が加齢に敏感である可能性があることを示唆するものだとしている。

  • 歩行速度と疲労レベル、年齢の関係性グラフ

    歩行速度と疲労レベル、年齢の関係性グラフ (出所:畿央大Webサイト)