環境省は7月1日からオオサンショウウオのうち、国の特別天然記念物に指定されている日本固有種以外のものとアフリカヒキガエルを特定外来生物に指定する。オオサンショウウオは、中国から食用目的で輸入された外来個体が自然界で繁殖し、固有種の生態を脅かしている。アフリカヒキガエルはまだ日本では確認されていないが、皮膚に毒を持つため、侵入した場合にヒトや生態系への影響がある可能性があり、被害を未然に防止する狙いだ。
特定外来生物に指定されると、捕獲して飼育することや販売、譲渡が禁止される。学術研究や教育目的でも、環境大臣の許可がなければ飼えない。見つかった個体は原則殺処分となる。アフリカヒキガエルはアフリカ大陸に多く生存するが、旅先で捕獲しても日本国内には持ち込めない。昨年指定したアメリカザリガニやアカミミガメは既に家庭で飼育されているケースがあったため、条件付きの規制としていた。今回指定する一部のオオサンショウウオとアフリカヒキガエルはペットとしての飼育が想定されておらず、無許可での飼育は一切禁じる。
日本固有種以外のオオサンショウウオは1970年代に日本の中国地方の企業が漢方などに使うために「チュウゴクオオサンショウウオ」を中国大陸から輸入し、それが屋外に放たれて繁殖したとみられる。今回は外来種のチュウゴクオオサンショウウオと、固有種とチュウゴクオオサンショウウオが交雑した個体をまとめて特定外来生物の対象にした。固有種は特別天然記念物として、個体数が減らないように保護を続ける。
環境省によると、固有種と外来種が交雑していることは、天然記念物に関する事業を所管する市町村の教育委員会による遺伝子検査で判明した。オオサンショウウオ類は50~60年の寿命で、オスを中心にメスが数匹集う集団で暮らしていることが多い。外来種と交雑個体のほうが固有種よりも体が大きい個体が多く、体が大きいオスのほうにメスが寄ってくる性質があるため、より繁殖する可能性が高い。このままではただでさえ少ない固有種が絶滅する可能性もあるとして特定外来生物に指定する検討を始めた。
今回の特定外来生物の指定についてパブリックコメントを実施したところ、「チュウゴクオオサンショウウオも生き物全体でみると減少しているため、保護して中国に返してはどうか」「殺処分はしない方が良い」といった意見が寄せられた。そこで、環境省が文化的背景も含めて各種専門家に問い合わせたところ、中国に返せば同国内で自然に増えるといった単純な話ではないことが分かったという。外交上の調整も必要となってくるため、環境省は中国側に返さない方針とした。「今回の指定は日本の固有種を守るためなので、理解してほしい」としている。なお、専門家でも固有種、外来個体、交雑個体を一目で見分けることは困難という。
近年、SNS等で「バズる」ためにオオサンショウウオ類を食べたり捕獲したりする動画があげられている。環境省は「見た目で分からない以上、万が一食べたものが特別天然記念物だった場合、非常に重い罪に問われる。オオサンショウウオ類を捕ることはやめてほしい」と強く注意喚起をしている。天然記念物を捕獲し、処分した場合、文化財保護法により懲役刑や禁錮刑、罰金刑が規定されている。
アフリカヒキガエルについては研究が進んでおらず、日本の生態系への影響は未知数だという。しかし、皮膚毒を持つことや、多産であること、食性の幅が広いことから、もし侵入が認められれば影響が大きいと判断した。また、小笠原・沖縄諸島に侵入した外来生物の同じ属のカエルが現地の昆虫をエサにし、希少な生態系を乱していることが確認できたため、指定した。
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