富士フイルム(後藤禎一社長)と順天堂大学医学部附属順天堂医院が、AI(人工知能)技術を用いて、外来患者の転倒リスクを予測する技術を共同で開発した。この技術により、外来患者の転倒リスクを高い精度で予測できるようになり、患者の転倒予防につながることが期待されている。
医療現場で、患者の転倒事故が相次いでいる。転倒は骨折や頭部外傷などの大けがにつながり、患者へ深刻な影響を及ぼす可能性がある。そのため、多くの医療機関では、入院患者のリスクの程度に応じて、スタッフによる付き添いや歩行介助などの転倒防止策を講じてきた。
一方、外来患者は入院患者より患者数が多いことに加え、医療機関の滞在時間が短いことから患者の状態を把握することが困難。そのため、外来患者の転倒リスクを早期に把握する仕組みづくりが求められている。
今回、両者は、富士フイルムの統合診療支援プラットフォーム『CITA Clinical Finder(シータ クリニカル ファインダー)』に蓄積された診療データと、AIを用いて、外来患者の転倒リスクを予測する技術を共同開発。電子カルテや放射線部門システム、内視鏡部門システムなど、同プラットフォームに集約されたデータから、年齢や薬剤の処方歴など、500種類以上の転倒リスクと関連性が高いと考えられる特徴量を生成し、AIに学習させ、開発したという。
富士フイルム執行役員メディカルシステム開発センター長の鍋田敏之氏は「順天堂医院の医学的知見と、富士フイルムの管理している大規模な診療データとAI技術を融合させることで、外来患者の転倒リスクの早期把握に寄与していく」とコメントしている。
高齢化に伴い、どうしても患者の転倒リスクは高まるが、医療現場では、病気の診断、治療のために来院した患者が院内で転倒してしまい、更なる疾患を患うことは絶対に避けたいもの。AI活用によって、医療現場の安心・安全を確保することができるか。