経費精算システムなどを手掛けるラクスは6月26日、東京都内で記者発表会を開き、請求書の受領領域に参入すると発表した。請求書受領を効率化する新サービス「楽楽請求」を7月1日より販売開始、10月1日より提供開始する。紙や電子などさまざまな方法で届く請求書を一元管理し、仕訳や支払業務の効率化につなげる。
新サービス「楽楽請求」、受領から処理・保管まで効率化
楽楽請求は、取引先から届く請求書の受領から社内の申請承認、経理による支払処理、会計処理、保管といった請求書受領後の一連の業務を効率化するサービス。アップロードされた請求書から自動で情報を読み取り、支払情報をデータ化する。AIを活用した高精度の光学式文字読み取り装置(AI-OCR)技術を活用する。
請求書ごとの仕訳も自動作成でき、手入力での仕訳作業や支払用のデータの転記や作成が不要になる。インボイス制度で必須項目となっている適格請求書発行事業者登録番号(T番号)の読み取りも可能で、国税庁のデータベースと自動で照合するため、法対応による請求書確認の負荷も軽減できるとしている。
紙の請求書はスキャンして一括でアップロードでき、メール送付される電子請求書は指定のアドレスへ送付すると自動でアップロードされる。読み取られた支払いデータは、自動で支払い申請に反映される仕組みだ。また、楽楽請求で作成した仕訳情報から会計システムに連携するデータや、支払処理を行うための振込データはワンクリックで作成できる。
「紙や電子などを問わず、受領したさまざまな請求書をクラウド上で一元管理できる。また、申請者が転記する必要がなくなるので、ミス防止や経理での修正・差し戻しの作業の削減につながる」と、26日の記者発表会に登壇した執行役員 楽楽クラウド事業本部 本部長の吉岡耕児氏は説明した。
提供価格は月額3万5000円(税抜)から導入できる。同社によると、月間の請求書処理件数が100件の企業が導入した場合、請求書処理にかかる手作業の時間を年間で約545時間削減できるという。
基本的には、紙やメールで届く請求書のアップロードは導入企業の担当者が行うが、請求書の受領からアップロードまでをラクスが代行するといったプランも用意されている。「競合製品との差別化要因の一つに、低価格を実現していることが挙げられる。当社の財務基盤を生かし、多くの企業が使いやすい価格帯を設定している」(吉岡氏)
請求書の「発行」と「受領」、電子化にギャップ
ラクスは堅調な成長を続けている。経費精算システム「楽楽精算」や、電子請求書発行システム「楽楽明細」をはじめとするバックオフィス向けのサービスが売上をけん引しており、2024年3月期の売上高は384億円だった。サービスの累計導入社数は8万3000社を超え、2000年の創業から24期連続で増収を達成している。年平均成長率は30%以上だ。
楽楽精算は経費精算システム市場の導入社数シェアで1位を、楽楽明細は帳票発行サービス市場の導入社数シェア・売上シェアで1位を取っている(出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所)
近年は特に楽楽明細の成長が著しい。2023年10月に開始したインボイス制度や2024年1月に宥恕(ゆうじょ)措置が終了した改正電子帳簿保存法によって、請求書発行における電子化が伸長しており、楽楽明細の導入者数も急増している。2024年3月末の累計導入社数は9971社と1年間で約6割増えた。
吉岡氏は「(2024年10月に開始する)郵便料金の値上げにより、請求書の電子化はさらに加速するだろう。紙の請求書を郵送している企業はコストダウンを図る動きをみせている」と、請求書の発行領域で電子化が進んでいる現状を説明した。
一方で、請求書の受領領域に関しては、電子化はあまり進んでいない。ラクスが全国の経理担当者668人を対象に実施した調査によると、請求書受領システムの導入率は22.3%に留まっている。また、35.9%が「受け取った請求書がインボイス制度に対応しているかを確認する手間」と、受領した請求書の処理業務について課題を感じているという。
ラクスは、新たに請求書の受領領域に参入することで、経理の業務フローを一気通貫で支援できる体制を構築する。
吉岡氏は「楽楽精算や楽楽明細の開発・提供で培った知見や基盤を活用し、請求書受領の領域でも導入社数1位を目指す。また、近い将来でARR(年間経常利益)100億円を達成することも目指し、営業体制の強化やテレビCMによる認知拡大、そして生成AIといった最新技術による機能強化などを進めていく」と、意気込みを見せていた。