特殊出生率は0.99
東京都知事選(7月7日投開票)は3選を目指す小池百合子氏と元立憲民主党参院議員の蓮舫氏による事実上の一騎打ちの様相だ。双方ともイメージ戦略に腐心するが、肝心の政策は置き去りにされつつある。
東京都といえば、1人の女性が生涯に産む見込みの子供の数を示す合計特殊出生率が0.99を記録。全国最低で1を切ったのは初めて。東京への一極集中が進む中、未来を担う子供の数は確実に減ることになる。
小池氏は2016年の就任当初に掲げた「7つのゼロ」の1つに「待機児童ゼロ」を挙げた。認可・認証保育所の定員を増やし、8466人いた待機児童は23年に286人まで減った。
一方、深刻なのは介護人材の不足だ。都の推計では25年度に約3万人足りなくなる。15年は現役世代2.9人で1人の高齢者(65歳以上)を支えたが、60年には1.7人で1人を支える。小池氏は介護職への特別給付や居住支援などを充実させたが、抜本的な解決に至っていない。
また、「都内総生産」が110兆円を超え、オランダのGDPに匹敵する東京だが、23年の世界の都市総合力ランキングでは3位を維持。しかし、シンガポールやドバイが激しい追い上げを見せているだけに、今後もその立場を維持できる保証はない。
小池氏は17年に投資を呼び込む「国際金融都市・東京」構想を打ち出した(21年改訂)。政府も6月に東京などを金融・資産運用特区に指定したが、そこで最大のネックとなっているのが首都直下地震のリスクだ。
30年以内に70%の確率で生じるとされる同地震の都の被害想定は最悪で死者6148人、建物被害19万4431棟。金融・経済機能のみならず、首都機能も集中する東京に致命的な打撃を与えかねない。
蓮舫氏は「仕分けの女王」と呼ばれ、民主党政権で進めた無駄な予算削減の象徴だった。立民の前身の民進党代表を約1年務めたが、台湾との「二重国籍」問題への対応ばかり注目され、在任中に行われた都議選で同党の議席を減らし、リーダーとして目立った実績は乏しい。
危機に対応できるリーダーは誰かを選ぶ都知事選となる。