「店舗で働く従業員をカスタマーハラスメント(カスハラ)などから守り、安心して働ける環境づくりが求められている」と語るのは、ローソン関係者。
ローソンは、店舗従業員が安心して働くことができるよう、名札の表示内容を見直した。今までは苗字を名札に表記していたが、アルファベットによる任意の文字やイニシャルでの表記も認めるという。顔写真は2020年1月からすでに掲載を止めている。プライバシー保護に加え、過剰なサービスを要求したり、暴言を浴びせてくる来店客のカスハラから従業員を守ることが目的だ。
大声での恫喝や罵声・暴言の繰り返し、土下座の強要や言いがかりによる金銭要求など、近年は小売業をはじめ、運輸業や飲食サービス業、宿泊業でカスハラ被害が増加している。
厚生労働省が2020年に実施した調査では、過去3年間に勤務先でカスハラを一度以上経験した人の割合は15%、内容は「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)」が52%と最も高く、「名誉棄損・侮辱・ひどい暴言」(46・9%)が続く。
同省では「業種や業態、企業文化などの違いから、カスハラの判断基準は企業ごとに違いが出てくる可能性がある。各社であらかじめ判断基準を明確にした上で、企業内の考え方、対応方針を統一して現場と共有しておくことが重要」と指摘する。
こうした状況下、AI(人工知能)を活用し、コールセンターの電話応対に生かそうとしているのがソフトバンク。AIを活用した感情認識・音声加工技術を駆使して、顧客の通話音声を穏やかな会話のトーンに変換することで、オペレーターの心理的負担を和らげようという試みだ。
あるスーパー関係者が語るように「ただでさえ人手の確保が大変なのに、カスハラによって従業員の心理的負担が重くなり、お店を辞められては困る」というのは本音だろう。今後、まずます人手不足が顕著になる中、AIなど、デジタル技術の活用も含めて、従業員をいかにカスハラ被害から守っていくか。古くて、新しい課題への対応が企業には求められている。