BULLと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月20日、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」の枠組みのもと、スペースデブリ対策関連事業の事業コンセプト共創に関する覚書を締結し、共創活動を開始したことを発表した。

  • 共創活動のイメージ

    共創活動のイメージ (C)BULL/JAXA(出所:JAXA)

近年、世界における通信衛星および地球観測衛星の打ち上げ回数が増加しており、それに伴って宇宙空間を漂うスペースデブリの数も年々増加傾向にあり、人工衛星やスペースデブリといった宇宙空間を飛行する物体同士の衝突リスクが上昇している。これはケスラーシンドロームに代表されるような、持続可能な宇宙開発利用を実現する上での課題となり、より早期の軌道離脱を実現するべく、あらかじめロケットや衛星にデブリ化を防止するための装置を取り付けることなどが検討されるようになってきている。

こうしたスペースデブリ問題に対応するべく、今回の共創では、BULLが開発を進めるデブリ対策機器(PMD装置)をイプシロンSロケットに搭載し、人工衛星分離後も軌道上に残置されるロケット上段部をPMD装置によって早期に軌道から除去することの実現性を検討していくという。

BULLは2022年に設立されたスタートアップ。2023年にはALEがJAXAと進めてきた共創活動の成果を含め、ALEが培ってきたスペースデブリ対策関連事業の資産を承継しPMD装置の開発を進めている。今回の共創活動では、そうしたこれまでの成果などを踏まえた上で、大気抵抗を主として活用したPMD装置をイプシロンSロケットへ搭載するための設計条件の整理、実際に搭載する場合を想定した運用シーケンスの検討、インタフェースの調整および安全対策の検討などを実施していくことを予定している。

JAXAは基幹ロケットの高度化研究の一環として、軌道上に残置せざるを得ないロケット上段部のデブリ化抑制に向けた検討を行ってきており、今回の共創活動を通してこれまでのロケット開発および運用で培った知見を提供し、イプシロンSロケットへPMD装置を搭載する場合の要求事項やインタフェース条件の検討を行っていくことで、モデルケースとして具体的な搭載条件および運用内容が整理されることにつながり、PMD装置のロケットへの搭載に向けた道筋を明確化することができるようになるとする。

なお、BULLとJAXAでは、今後急速な増加が予測される地球低軌道上のデブリの発生を抑制するべく、宇宙環境のサステナビリティに貢献する技術開発の1つとして、共創活動を進めていきたいとしており、その結果としてミッション終了後のロケットおよびその残骸を減らし、スペースデブリの物体同士の衝突リスクを将来に向けて低減することにつなげていきたいとしている。