東芝、双日、伯CBMMの3社は、ニオブチタン酸化物(NTO)を負極に用いた電気バス向け次世代リチウムイオン電池の共同開発に成功したこと、ならびに同電池を搭載し、約10分の超急速充電である程度の距離を走行することが可能な電力を充電できる電気バスの試作車を公開。CBMMが権益を所有するブラジル・ミナスジェライス州にあるアラシャ鉱山で実際に走行させる形での実証実験を開始したことを発表した。
NTOは、リチウムイオン電池の負極材として一般的に使用される黒鉛と比較して、2倍の理論体積容量密度を持つ材料。伯CBMMは、鉄鋼添加剤として主に高張力鋼、ステンレス鋼などの高級鋼材の原料に用いられ、特に自動車向け鋼材の軽量化・剛性化には不可欠とされている金属元素の1つであり、NTOにも用いられる「ニオブ(Nb)」において世界トップクラスの生産量と販売量を保有しているほか、高い技術力と製品開発プログラムを有しているニオブ生産会社。また、双日は、そのCBMMの株主の1社であり、同社の日本市場向け総代理店として、安定的な原料供給体制の構築や用途開拓を進めてきたという関係性があり、これまでCBMMと双日が提供するニオブ原料を用いて、東芝が主導する形でNTOを用いた次世代リチウムイオン電池「SCiB Nb」の技術開発が進められてきたとする。
これまでの流れとしては2018年6月にNTOを用いたリチウムイオン電池負極材の共同開発契約を3社間で締結。試作セルの開発が進められた後、2021年9月には改めて商業化に向けた共同開発契約が締結され、早期の市場投入に向けて主に商用電気自動車への応用を目指した協業が進められ、今回の試作車への適用まで漕ぎつけた。
また3社は、2023年8月には共同販売契約も締結しており、サプライチェーン構築に向けた活動と営業・マーケティング活動を推進。2024年5月には、ブラジル・日本両国政府関係者の立ち合いのもとサプライチェーンの強靭化と事業化の推進について合意している。
今回開発された試作車は、ラテンアメリカにおける電気トラックの開発・生産の先駆者であるフォルクスワーゲン・トラック・アンド・バス(Volkswagen Truck & Bus)が手掛ける電気バスをベースとしており、3社ではこの実証実験を通じて、NTOを用いた次世代リチウムイオン電池の特性および車両運行データの収集を行い、商業化に向けた必要な調整を行っていくという。
なお3社は、各社の技術・ノウハウ・知見を最大限に活用していくことで2025年春のNTOを用いた次世代リチウムイオン電池の製品化およびグローバルでの販売に向けた活動を推進していくとしている。