メーカー側が〝独自解釈〟
「正直、残念な気持ちと、『ブルータスお前もか』という感じだ。トヨタは完璧な会社ではない。しかし問題が出てきたことは、ある意味で、ありがたいことだと思っている」─。認証不正問題を起こしたトヨタ自動車会長の豊田章男氏は心情を吐露。
車の量産に必要な「型式指定」を巡り、ダイハツ工業や豊田自動織機に続き、本体のトヨタでも認証試験の不正が発覚。他にもマツダやホンダ、ヤマハ発動機、スズキでも安全・環境性能に関わる不正が確認された。
不正の内容は多岐にわたる。その中でも共通するのは国の認証制度をメーカー側は〝独自解釈〟した点だ。トヨタの場合は、燃料漏れなどを確認する後方からの衝突試験で、1.1トンの評価用台車を衝突させる際、より重い1.8トンの台車を使用していた。基準より厳しい試験を行うことで認証はクリアできると現場が捉えたという。
「クルマの機能が多岐にわたり、検査項目も増えていった。だが、新型車投入の間隔が短くなることはない。その分、現場にしわ寄せが起きたのではないか」とアナリストの1人は指摘する。
豊田氏は「このタイミングで私の口から言えない」と断った上で、開発現場の実態と認証制度の間とで「ギャップがある」と話す。ただ、法規で定められた手順を省いたことは「絶対にやってはいけないこと」(同)。
また、「クルマの開発は短い納期で何度もやり直しをする。最後の方で(現場に)大きな負担をかけてしまった」(同)ということであれば、現場力の劣化と共に、経営陣のマネジメント力が問われているとも言える。
前出のアナリストは「認証業務は利益を生む仕事ではなく、コストセンターとして捉えられがちなところがある」とも話す。しかし、認証業務は安全・安心という国のお墨付きをメーカーが得る業務。今回の不正で直ちに大きな事故が起こるわけではないが、各社には〝襟を正す姿勢〟がより一層求められる。
特にトヨタの場合は、電動化に対し、あらゆる電動車を提供する〝全方位外交〟を掲げている。体制面で手を打たなければ現場へのプレッシャーはさらに強くなる。経営陣の責任は重い。