数量を落とさず顧客離れを防ぐ
山崎製パンの2023年度の売上高が1兆1755億円だと発表された。同社事業のうちパン事業は約46.1%を占め、そのうち菓子パン部門(食卓ロール、総菜パン、ドーナツ等を含む)の売上は4334億円。テレワークが定着し、生活様式が変わり、家の近所にあるスーパーやコンビニ等の小売店における売上は伸長を続ける。
原材料費高騰による値上げも行ったが、山崎製パンは〝3極化〟の価格戦略を行った。
例えば、100円の商品を120円に値上げした場合に、商品から離れてしまう顧客層に向けて、同価格100円で購入できる新商品を投下。これにより、同社は販売数量を落とさず増益に成功。商品の価格に魅力を感じ購入していた顧客離れを防ぎ、その層へ新たな提案をしたことが功を奏した。
製品開発は女性が中心となって行っており、魅力ある新製品を打ち出せたことが売上に大きく寄与。最近では物価高で人々の節約志向が続く中、ランチは外食ではなく、コンビニでパン1~2つと飲み物あわせて500円程度に収めるといった人も増加している。
「パンの売上数としては甘い菓子パンの方が圧倒的に多いが、一昨年あたりから総菜パン(甘くないもの)の需要が少しずつ増えてきていると感じる」(同社関係者)。
同社の菓子パン商品の中で10年連続出荷数1位は、1987年に発売された『まるごとソーセージ』。同商品は2023年の売上金額ベースでも1位の定番人気商品。店頭価格150円前後でボリューム感のある食べ応えがロングセラーの理由だ。
同社は企画力と効率的な生産体制で年間4000もの新商品を生み出すが、ロングセラーはいまだ定番商品が強い。節約志向が続く中、新しい商品にチャレンジするよりも、慣れ親しんだ商品を選ぶ人々の傾向もあるのだろうか。