旭化成が腎疾患の製薬会社買収 「ニッチ」な専門領域で攻める

「今回のM&A(企業の合併・買収)は時間をかけて、慎重に検討した結果、『ぜひやりたい』ということで決議した」と話すのは、旭化成社長の工藤幸四郎氏。

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 旭化成はスウェーデンの製薬会社・カリディタス社のTOB(株式公開買い付け)による買収を発表した。買収総額は約1739億円を見込んでいる。

 カリディタス社は難治性の腎疾患「IgA腎症」の治療薬「タルペーヨ」を持つことが強みで、23年にFDA(米食品医薬品局)の本承認を得ている。

 旭化成は、この「タルペーヨ」のピーク時売上高を2030年度以降に5億ドル(約780億円)超と見込んでいる。

「今後のグローバルスペシャリティファーマ事業の成長の牽引役になることを期待している」(工藤氏)

 20年に約1400億円を投じた米ベロキシス社買収に続く、腎疾患領域での買収。ベロキシス社は腎移植患者向けの免疫抑制剤に強みを持つが、今回の買収で、腎臓関連では腎疾患に事業領域を広げる。接点を持つ医療機関が増えることになり、この領域での旭化成のプレゼンスを高めることを目指す。

「当社が強みを発揮できる特定の疾患領域にフォーカスして社会に貢献していく。成長市場である北米で新たな成長ドライバーを手に入れることで、グローバルスペシャリティファーマとして成長できる」と工藤氏。

 旭化成の医薬における戦略は、「ニッチ」な領域に特化することで、世界の製薬大手と競合せず、臨床試験規模が比較的小さく、大きな営業部隊も必要としない体制とすること。「ニッチなスペシャリティ」が目指す方向性。

 旭化成にとってヘルスケア領域は大きな事業の柱であるとともに、2030年度以降は第1の柱となる可能性がある。その強化に向け、今後もさらなる買収など、成長を模索していく。