IoTが多彩なシーンで浸透するなか、生成AIの技術が飛躍的に進歩し、IoTの世界でも生成AI活用で新たな可能性が広がることは間違いない状況だ。
MODEはこのほど、「MODEセンサーパートナープログラム」(以下、パートナープログラム)においてチャット型アシスタントサービスの「BizStack Assistant」にも対応、IoTセンサーメーカーの生成AIを活用したビジネス実現を支援する新たなプログラムを発表した。
チャットベースのAI対話が現場のIoT利用を変える
MODEは2014年に米サンフランシスコで創業。2017年に東京オフィスを開設し、現在は日本を中心にビジネスを展開している。、東京ミッドタウン八重洲で開催された記者発表会では、事業開発マネージャー/センサーパートナープログラム責任者を務める山田章人氏が登壇し、パートナープログラムの概要とこれまでの歩みを説明した。
IoTは、ハードウェア部分であるセンサーとそのデータを受けるソフトウェア部分から成り立つ。これらのうち、MODEはデータを収集・可視化・一元管理して分析などさまざまな活用につなげるソフトウェア部分を提供する企業だ。
2022年6月、センサーパートナーすなわちIoTセンサーデバイスを開発するメーカーと連携し、メーカーのビジネスやマーケティング、IoTソリューション開発をサポートするものとして、パートナープログラムが立ち上がった。
従来のIoTシステムは、ソフトウェア部分が個々のセンサーに対応する形で提供されてきた。そのため、開発に時間や手間を要していたほか、操作もシステムにより異なることから習熟が必要で、エンドユーザーの活用がなかなか進まない課題があった。加えて、他のセンサーを併せて活用しようにもシステムの壁があり、データが分散して、センサーを横断した一元的な利用は現実的に難しかった。
その課題を解決するために登場したのが、メーカー各社の多種多様なセンサーのデータを集約して一元管理するプラットフォーム「BizStack」である。
BizStackでは、独自のシステムを開発することなく、センサーを簡単に利用できるようになる。2023年には、現場のエンドユーザーがより手軽にデータを確認できるようにするため、「ChatGPT」を利用した対話型生成AIを搭載した。さらに2024年5月、IoTデータをChatGPTで抽出できるチャット型アシスタントサービス「BizStack Assistant」の提供を正式スタートした。
現場のユーザーは物理現象を検知したセンサーすなわちハードウェアのデータを、ソフトウェア側を操作して確認し、状況を把握して対応を検討する必要がある。従来のBizStackはPC画面上のダッシュボードでデータを表示する仕様だったが、対話型生成AIにより自然な会話のチャットの中で、しかもスマートフォンを使って確認できるようになった。
MODEからすれば、IoTと生成AIを掛け合わせたDX(デジタルトランスフォーメーション)推進をサポートしていくシステム面の体制がこれで整ったといえる。
生成AIでIoTセンサーを“知能化”しビジネスを創出
ただ、「IoTはあくまでも現場からデータを取得するセンサーが主役であり、MODEのプラットフォームはいわば黒子です」と山田氏は語る。
逆に見れば、MODEのプラットフォームはメーカーを超えた多種多様なセンサーからのデータを一元管理・活用できるところが最大の強みであり、BizStackに取り込むセンサーを増やしていけば使えるシーンも増えていく。そのBizStackの価値を高めるキーとなる仕掛けが、センサーメーカーとのパートナーシップによって独自のエコシステムを形成するパートナープログラムだ。
同プログラムではメーカーを広く募ってセンサーデバイスを登録してもらい、MODEはメーカーに対してクラウド技術の支援から営業・マーケティング支援、センサービジネス拡大に向けた支援までを提供する。パートナー企業数はプログラム立ち上げから2年で49社に到達し、対応するセンサー数は57機種に及んでいる。また、この2年で延べ150を超えるパートナーとの連携事例が生まれ、エンドユーザーに採択された共同ソリューション提供数も76社に上る。
この日の発表の本旨は、前月に提供開始がアナウンスされたAIアシスタントサービスのBizStack Assistantにパートナープログラムが対応したことだ。
「環境センサーは現在の気温などを、また電流センサーは電流値を検知し、機械的に出力してくれます。そのデータを業務知識を学習した生成AIで処理すると、例えば気温32度を超えると熱中症のリスクが上がる、電流が止まっているので機械も止まっている可能性があるといったことを発信できます。それを、現場ユーザーはBizStack Assistantを使うことで自然な会話により簡単にチェックでき、かつその状況に対応するAIの提案も得られるようになります。これを当社では、生成AIでセンサーを“知能化”する、と呼んでいます」(山田氏)
従来のBizStackはPCの前に座り、ダッシュボードでデータを確認する必要があった。それが自然言語のチャットベースで、現場や機械の状況のアウトプットはもちろん、業務内容を理解したAIが考える一歩踏み込んだ対応のヒントまで得られるようになったわけだ。
しかも、BizStackのプラットフォームに取り込まれたセンサーの場合、独自にUIを開発する必要がなく、開発コスト・時間や操作習熟の手間もかけずにセンサーデータを活用できるようになる。さらには、一元管理のプラットフォームで複数センサーを複合的に活用することも可能だ。
パートナー企業のソリューション開発をサポート
山田氏は、会議室の空調機の動作確認と工場の機械の稼働状況について、「BizStack Assistant」のチャットで確認する様子をデモンストレーションした。
「人感センサーの現在の状況を教えてください」「3号機の現在の電流値を教えてください」といった、さながら現場の担当者に口頭で尋ねるような手軽さと自然さでセンサーデータを確認でき、「ちなみに、1週間分のデータをグラフ化してくれますか」と言葉を継ぐ形でグラフも表示された。
IoTは現在、土木/建設や交通、ファシリティマネジメントといった社会インフラで多く採用されている。MODEの主なターゲットもそうした領域で、多様なIoTセンサーを簡単に、ニーズによっては複数センサーも融合して活用できる状況をBizStackとBizStack Assistant、そしてパートナープログラムによりサポートしていく。
これにより、現状は可視化だけで終わっているケースの多いIoTのより実際的な活用や、コスト削減、デバイスによりデータがサイロ化された状態の解消を進め、現場業務の効率化、異常検知の高度化による安心・安全の実現、さらにその先のDXにつなげるのがMODEの狙いである。
今回のパートナープログラムのアップデートで、パートナー企業はテストフィールドを活用できるメニューが広がり、生成AIを活用したソリューション開発を加速できる。さらに、2023年からは画期的なセンサーを募集・表彰する、MODE Sensor Awardも開催。ものづくり大国・日本におけるセンサー業界の隆盛を後押しするような取り組みも進めている。
最後に山田氏は「パートナーを今年70社、来年には100社へと増やし、日本一のIoTパートナープログラムを目指していきます」と語って、記者発表会を締めた。