NTTデータグループが6月18日に開催した株主総会後に、副社長執行役員でCTO(最高技術責任者)の佐々木裕氏が新社長に昇格した。国内事業会社のNTTデータの社長は兼任する形。2018年から社長を務め、2022年の海外事業再編や2023年の持ち株会社制移行などを主導した本間洋氏は、相談役に就いた。
就任に先んじて開かれた記者会見で佐々木氏は「データセンターや生成AIといった成長領域への積極的な投資により事業拡大を加速していく」と、今後の戦略を説明した。
積極的なM&Aを続けるNTTデータグループ
NTTデータグループは1月、国内事業の成長に向け、2025年度までにM&A(合併・買収)に約1000億円投資すると発表し、その取り組みを加速させている。
同社は4月5日に、東証プライム上場の独立系システム開発のジャステックに対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化すると発表。買い付け総額は約340億円で5月23日にTOBが完了した。
また4月12日には、Salesforce(セールスフォース)事業の強化に向け、テラスカイの株式と新株予約権を取得し、今後テラスカイが発行する株式の20.12%を取得することを発表。セールスフォースをはじめとしたCX(カスタマーエクスペリエンス)領域で3年後に500億円のビジネス規模拡大を目指す。
5月27日には360億円を投じてマレーシアの決済代行大手GHLシステムズを買収すると発表した。キャッシュレス時代において、決済ビジネスを同社の成長ドライバの1つとして拡大していく考え。「ECだけじゃなく端末決済に強みを持つGHLを取り込み、2030年に向け1500億円規模のビジネスまで拡大していく。比較的中規模の会社に出資し、ハイリターンな売上向上を狙う」(佐々木氏)
さらに6月11日には、インドで製薬企業向けにSaaSソリューションを提供しているProvenTech Consulting Private Limited(プロベンテック)を買収すると発表した(買収額は非公表)。同買収を通じ、SAP関連サービスおよびアセットの強化につなげる。
佐々木氏は「M&Aに限らず、より効率的な資本運用を目指し、既存企業に対する資本提携の見直しも含めて、NTTデータグループの資本の最適化を推進していく」と述べた。
佐々木社長「コンサルティング能力を磨く」
佐々木氏は、組織能力の向上にも力を注ぐ。日本国内だけでなくグローバルでの競争に勝っていくために、コンサルティング能力の強化を急ぐ。
「顧客の成果にコミットしていくことが重要。確実に利益を出すためには提言が欠かせない。提言を言って終わりでなく、成果につなげ提言をさらに磨く。そして、それを実現するエンジニアリング力をさらに強化していく」(佐々木氏)
佐々木氏は続けて「実装の領域の買収が続いているが、コンサルティングの領域に関してもM&Aを進めていく。即戦力になる人材や会社が足元で必要になっている。なにが当社に足りないかということを見極めながらM&Aを加速させていく」と述べた。