日本マイクロソフトは6月18日、AI(人工知能)のために設計された新カテゴリーのWindows PC「Copilot+ PC (コパイロットプラス ピーシー)」 の国内販売を午前9時より開始する。前日の17日に開かれた説明会では、Copilot+ PCに搭載される新機能などが紹介された。
最大の特徴は“端末上でのAI処理の高速化”
Copilot+ PCの最大の特徴は、端末上で直接AIを高速で実行できるようになった点だ。最先端のCPU、GPUに加え、AIを処理するためのNPUが新たに搭載され、マイクロソフトが提供する小規模言語モデル(SLM)を活用することで、クラウド上ではなく端末上で直接AIを実行できるようになった。
1秒あたり40兆回の演算を行うことができ、5年前の同社のPC比で最大5倍の性能を備えているという。また、ローカルビデオを最大22時間連続で再生できるほどのバッテリーが搭載された。
Copilot+ PCは、同社ブランドの端末「Surface」に加え、デル・テクノロジーズや日本HP、レノボ・ジャパン、日本エイサー、ASUS Japanといった日本マイクロソフトのOEMパートナーである各PCメーカーからも順次製品が投入される。日本マイクロソフトでは「Surface Pro(第11世代)」と「Surface Laptop(第7世代)」の2機種を用意した。価格はどちら20万7680円から。
すべてのCopilot+ PCに「Copilot キー」が導入され、このキーを押すだけで対話型の「AIエージェント」を呼び出せる。今後、数週間以内に米OpenAIの「GPT-4o」といった最新AIモデルの導入も予定しているとのことだ。
「アレ、どこで見たっけ?」を解決する「リコール」
「リコール」機能は、PC上で以前に見かけたことがある情報を即座に探し出すことができる機能だ。
定期的に画面に表示される情報のスクリーンショットを撮り、ビジュアルタイムラインが作成される。ユーザーはテキストで検索し、タイムラインを遡ることで、アプリケーションやウェブサイト、文書などを横断して、探しているコンテンツを見つけ出すことができる。
例えば、「以前に見た青っぽいグラフどこにあるっけ……」という際に、「青いグラフ」とテキスト検索することで、青色のグラフを表示したアプリを一覧表示してくれる。
また、海辺をサイクリングした際に撮影した写真が見つからないときに「海と自転車」と検索すると、視覚的に一致する写真や動画などが表示される。また、Outlookの特定のメールや、Teamsのチャットなど、探していた資料に直接アクセスすることも可能だ。
現在、同機能はプレビュー版での提供であり、利用にはCopilot+ PCの設定で同機能を有効にし、生体認証「Windows Hello」の登録が必須だ。スクリーンショットの画像は検索ワードを含めて暗号化された上で端末上に保存され、端末上のAI機能で文脈を理解する。
説明会に登壇した日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマ事業部 モダンライフ戦略本部 本部長の小澤拓史氏は「当社の調査によれば、ビジネスパーソンは1週間あたり平均5時間、PC上で“何か”を探している。リコール機能では、頭の片隅にあるイメージをそのまま言葉で問いかけるだけで、探したい情報にたどり着くことができる」と説明した。
同機能を使用する際は、ユーザーが PC の前に物理的に存在している必要があり、暗号化されたデータは、ユーザーが認証した場合にのみ復号化される仕組み。また、何が保存されるかについてはユーザーが指定することが可能で、スクリーンショットの削除に加え、保存の一時停止や無効化の設定が常に可能だ。
加えて、Copilot+ PCにはストレージ要件もある。「容量が256GB以上であること」と「少なくとも50GB以上の空き容量を確保すること」が必須条件で、ストレージの残容量が25GB以下となるとリコール機能は自動的に無効化されるとのこと。
「プライバシーに配慮し、ユーザー自身で柔軟に設定できる機能を搭載した。安心して使うことができる」(小澤氏)
手描きと文字によるプロンプトで画像を生成「コクリエイター」
「コクリエイター」機能は、ほぼリアルタイムに手描きと文字によるプロンプトで、画像を生成できる新機能。新しいペイントアプリに搭載された機能だ。
例えば、「森林の中のコテージ」とテキストで入力した後、それっぽい絵を描くと、自分で描いた構図に近い画像を生成してくれる。「創造性スライダー」の数値を変更することで、生成のレベルを調整することも可能。
また、実写風や印象派風、アニメ風などのスタイルを自由に選択でき、絵心やスキルに関係なく自分のアイデアを自由に表現することができる。「自分のアイデアを反映したオリジナルの絵を、AIがブラッシュアップしてくれる」(小澤氏)
ただし、現時点ではプロンプトの入力は英語に最適化されており、日本語を含む他言語では処理に時間が掛かる可能性があるという。同機能もプレビュー版としての提供だが、Copilot+ PCであればだれでも利用できる。
Copilot+ PCには他にも、「フォト」アプリに組み込まれる生成AI機能「イメージクリエイター」や、日本語を含む44言語を、英語にリアルタイム翻訳して字幕表示する機能「ライブキャプション」といった限定機能が搭載された。
日本マイクロソフト 執行役員 常務 コンシューマ事業部長の竹内洋平氏は「AIを中心にPC全体を一から再構築した。Copilot+ PCはWindows史上で最も高性能なPCだ」と胸を張った。