日立製作所(日立)は6月17日、シリコン量子コンピュータの実用化に向けて、量子ビットを安定化させる技術を開発し、量子ビットの寿命を100倍以上延ばせることを確認したと発表した。
量子コンピュータで実用的な計算を行うには、100万量子ビット以上が必要とされており、量子ビットの大規模集積化や効率的な制御技術、誤り訂正の実装が重要となっている。日立が研究開発を進める「シリコン量子コンピュータ」は、集積化に有利である一方で、半導体中の核スピンなどがノイズとなり、量子ビットが不安定になりやすく、量子アルゴリズムや誤り訂正の実装が困難となっていた。
このたび同社が開発した技術は、マイクロ波の位相を変調することで半導体中のノイズを一部無効化し、量子ビットを安定させて寿命を100倍以上延伸することを可能にするもの。この成果は量子ビットの集積化や量子アルゴリズム、誤り訂正の実装に向けた重要な一歩となり、今後も研究を進め、量子コンピュータの早期実用化を目指すとしている。
なお、この成果は、6月16日から20日に米・ハワイ州で開催されるシンポジウム「2024 IEEE Symposium on VLSI Technology & Circuits」で発表されるという。また、研究の一部は、ムーンショット型研究開発事業 目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」の研究開発プロジェクト「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発 グラント番号 JPMJMS2065」による助成を受けて行われたとのことだ。