太陽ホールディングス(太陽HD)は6月6日、東京エレクトロン(TEL)と「急拡大する生成AIと、需要高まる半導体」という共催セミナーを開催し、「半導体の三次元積層に向けたRDL(再配線層)材料について」と題した講演を行った。
太陽HDは、エレクトロニクス事業や医療・医薬品事業、ICT&S(Sustainability)事業を展開しており、2023年には創業70周年を迎えた。中核事業であるエレクトロニクス事業の主力の1つであるプリント基板(PCB)向けソルダーレジスト(SR)では世界トップシェアを獲得、長年に渡り業界を支えてきた。
トップシェアを獲得することもあり、表面保護や絶縁などの用途で活用する「フレキシブル基板用SR」、「汎用品/高機能品リジット基板用SR」、「半導体パッケージ(PKG)基板用SR」、穴埋めや層間絶縁などの用途で活用する「ビルドアップ(BU)用部材」など幅広く製品を展開。PCB向け以外にもSRの開発技術を応用し、感光性カバーレイや導電性・磁性材料、白と黒のディスプレイ用部材なども販売している。
太陽HDの研究本部 三次元実装材料プロジェクト プロジェクトリーダーである緒方寿幸氏は「当社の化学材料の強みは“残る材料”にある。エレクトロニクスで残るものというのは、信頼性が非常に重要になるため、そこに対する分子設計、材料設計が我々の強みとなっている」と話す。
2023年には、米国の半導体業界の研究コンソーシアム「Semiconductor Research Corporation(SRC)」で、後工程向けのアドバンストパッケージ技術のロードマップ「Microelectronics and Advanced Packaging Technologies Roadmap(MAPTロードマップ)」が公開されるなど、米国でも半導体製造における後工程に対する研究開発の勢いが強くなっており、世界的に前工程のみならず、後工程に関してもヘテロジニアスインテグレーションを可能にする技術開発目標が明示されたこととなる。
近年、半導体業界では、半導体デバイスとしての高機能・高性能化を持続させるためにて三次元積層に向けたRDLの微細化を目指した研究開発が各所で精力的に進められている。配線の密度を上げるとデータの高速通信が可能になるほか、消費電力も下げることができるからだが、そのためにはRDLの微細化に対応できる高解像度な感光性絶縁材料が求められるようになっている。
太陽HDでは、これまで高解像度感光性絶縁材料分野にはそれほど注力してこなかったというが、2年前の2022年、研究本部内において三次元実装材料プロジェクトを立ち上げ、ウェハレベルに対応した新たな高解像度感光性絶縁材料の研究開発を開始したという。
開発を進めている高解像度感光性絶縁材料は、感光性はネガ型で、露光波長はi-line(λ=365nm)、現像液は濃度が2.38%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)という仕様で、解像度は配線の幅と隣り合う配線同士の間隔であるライン/スペース(L/S)で0.7/0.7μm、厚さ2.6μmを実現しているとする。
研究レベルとしては、8インチのウェハプロセスに対して同材料を適用し、L/Sが1/1μm、温度130℃、相対湿度85%、電圧1.7Vという条件で信頼性の検証を実施したところ、8インチウェハプロセスで活用できることが確認されたという。
今後は、12インチウェハプロセスで開発した高解像度感光性絶縁材料の検証を行っていくことで、事業展開を図っていきたいとする。また、同社はベルギーにある半導体研究機関imecの3Dプログラムへ参加し、RDLの微細化技術の共同開発にも着手しており、今後も研究開発を加速させたい意向を示している。
具体的な高解像度感光性絶縁材料の販売時期は未定としつつも、「(この高解像度感光性絶縁材料を)2026年には市場に投入していきたい。現状は、まだまだ研究開発レベルのプロダクトアウト的な意味合いが強いが、我々がこうした研究に取り組んでいるということを2024年はアピールしていきたい」と緒方氏は語っていた。