【株価はどう動く?】日本の実質賃金はプラスに転じるか?米国のインフレは高止まりが続く

二番底は入ったか?

 直近の日本の株価の動きを解説すると、2024年3月7日に4万472円で一番天井、3月22日に4万1087円で二番天井を付けた後、下落調整局面が続いています。これは前回指摘したように相場の波動通りです。

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 昨年10月4日の3万487円の安値、ダブルボトムから始まった株価上昇は、24年3月22日に当面の天井を付けました。この間、ほぼ6カ月で、これも日柄です。

 改めて説明すると、短期波動の短期サイクルは2ないし3カ月、中期サイクルは数カ月から半年、長期サイクルは12ないし13カ月という日柄があります。

 3月22日の高値は現時点で史上最高値ですが、その後の安値が4月19日の3万6733円です。この安値をどう見るかですが、価格の波動からすると、昨年10月の安値から、3月の史上最高値まで1万600円上げています。この3分の1押しは3万7500円近辺ですが、4月19日安値は、これを少し下回っています。ただ、半値押しはしていません。

 波動から見て重要なのは、二番底がいつ入るかだと前回指摘しましたが、5月30日はザラ場で3万7617円とちょうど3分の1押し水準を付けました。この近辺が安値ならば、4月19日の3万6733円に対する二番底になります。

 米国の動きを見るとニューヨークダウは5月29日に前日比411ドル安の3万8441ドルを付けています。これは米国の金利とインフレが予想外に高止まりしているからです。

 一部連銀のトップは、年末まで利下げできる状態にならないという悲観的な見方をしています。ですので、ここで米国株が大きく下げた場合、日本の株価も連動して下げて、二番底を付ける可能性があります。

 また、なぜ今、日本株が下げているのかというと、1つは米国株との連動、もう1つは実質賃金の下落です。厚生労働省の毎月勤労統計によると24カ月連続の下落となりました。

 昨年来、名目賃金は上がっていますが、物価上昇率に追いついていません。この実質賃金がプラスにならないと株価の頭は重いということになります。

 この4月以降、大企業を中心に名目賃金は6%上げると言っていますから、実質賃金は3.5%程度に上昇することになり、インフレ率の2.5%から0.75%を上回ることになります。

 第2四半期の統計は7月に出ますが、ここで実質賃金がプラスに転じるようなら株価は上がります。

 前回指摘したように、6月の国会会期末に解散総選挙があれば株価上昇のシグナルになりますし、7月に実質賃金がプラスに転じれば、新しい株高が始まるというのが当面の読みです。

 6月に解散総選挙がなくとも、定額減税と実質賃金の上昇ということで岸田政権の支持率が上向いてくれば、9月の自民党総裁選で岸田首相が再選される可能性が出てきます。こうなると再選後、年末までの解散の可能性が高まります。

 日本の株価は4万円の壁を突破できず、高値を付けてから2カ月以上揉み合っており、6月23日で丸3カ月になります。これは日柄です。前述の材料が重なり、ここで相場の転機が訪れる可能性があります。

 6月になっても株価が揉み合っている場合には、次は9月が転機になります。ここは天井を付けてから6カ月ですが、これも日柄です。ここで自民党総裁選が行われて、岸田首相の再選を歓迎する相場が出るか、あるいは岸田首相では選挙が戦えないとして新しい候補が出てくるか。この新しい候補を日本の株式市場が歓迎するかどうかが問われます。

日本の企業は優勝劣敗の時代に

 私は年後半になっても、米国のインフレは収まっていないのではないかと見ています。以前も紹介しましたが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が金利先物取引の値動きから金融政策を予想する「FEDウォッチ」は昨年、年4、5回の利下げを織り込んでいましたが、足元では1、2回にまで見方が後退していますが、0になる可能性もあります。それどころか、利上げがあり得るという見方も出ています。

 ですからインフレ、金利が高止まりしたままで、米国経済は年後半を迎える可能性が高いので、これによって大統領選では共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勝利することになるかもしれません。

 なので、日本の円安トレンドは続くことが予想されます。再び、1ドル=160円を付ける局面もあるかもしれません。その時は再び政府が介入するかもしれませんが、前回同様一時的な効果で終わるでしょう。

 日米金利差によるドル高が続くだけでなく、バイデン政権がドル高を容認していることも背景にあります。ですから、少なくとも今年11月まではドル高円安が続くものと見ています。銘柄で見ると円安、脱デフレの恩恵を受ける海運や総合商社の株価は年後半も強い動きとなりそうです。

 一方、円安が続くと輸入コストが上がりますから、それで困る業種の人達からは悲鳴が上がることになります。しかし、前回も指摘したように円安は、30年続いたデフレを脱却するのには役立っています。デフレ脱却には物価が上がらなければならないからです。

 ですからこの後、物価上昇率が3%を超えてくる局面もあるかもしれません。そこで日本では「創造的破壊」が起こることが予想されます。経済構造が大転換していきますから今後、日本の企業は優勝劣敗の時代の中で、勝ち組と負け組の差が大きくなります。

 地政学リスクの高まりもあり、世界情勢も厳しい。20年のコロナショック以来、世界は「戦国時代」に入りました。米国主導の国際秩序は終わりつつあり、ロシア、中国、イランが台頭する状況です。日本はデフレから脱却し、2029年には日経平均8万円を目指すというのが、相場の波動から見た長期予測です。