東レエンジニアリングとNECは6月13日、設計業務の効率化と技術伝承を目指し、NECのPLMソフトウェア「Obbligato」と生成AIを使った実証実験を8月から開始することを発表した。

生成AIが過去の技術情報を検索・要約し、設計者の質問に回答を提示することで、設計開発に係る技術伝承を促進するとともにフロントローディングによる上流設計の最適化を図る。

  • 「技術情報の問い合わせ」の画面イメージ

    「技術情報の問い合わせ」の画面イメージ

実証実験の背景

日本経済全体の成長が人手不足によって阻まれるなか、製造業ではAIやロボットなどのデジタル技術を活用した省人化・高度化に向けた取り組みが進められている。

また、高度な技術を持つ人材の高齢化や技術を伝承する人材も減少していることで、高い専門技能やノウハウの伝承が課題になっている。

特に、設計の上流工程では経験豊富な技術者のノウハウが重要であることから、この課題解決のため、東レエンジニアリングとNECは技術伝承の促進および設計業務の高度化を目指し、生成AIを用いた実証を行う。

実証実験の概要

具体的には、NECのPLMソフトウェア「Obbligato」と、LLM(大規模言語モデル)を連携させ、Obbligatoが選択したドキュメントに登録されているファイルをLLMを用いて要約するとともに、技術情報に関する質問に対しLLMが過去の製品開発で蓄積された情報をもとにチャット形式で回答するという。東レエンジニアリングは幅広い設計業務を持ち、これらの技術を用いて効率化と精度向上を検証するということだ。

実施内容は「ドキュメントの要約」として、Obbligatoで管理しているドキュメントを選択するとドキュメントに登録された複数ファイルの内容をまとめた要約を表示し、ファイルを開かず即座に概要を確認可能。

また、「技術情報の問い合わせ」として、Obbligatoで管理している技術情報に関して質問すると、蓄積された過去の情報をもとにLLMがチャット形式で回答する。元情報の参照・確認も可能とのことだ。

両社の今後の展望

東レエンジニアリングは、今回の実証を通してObbligatoとLLMの連携機能の向上に取り組み、技術の維持と高度化を推進し、社会課題の解決につながるプラントや装置の開発を強化する。

NECは、価値提供モデル「BluStellar」を通じて社会課題や顧客の経営課題を解決に導くとしている。また、ObbligatoのLLM活用実証を拡大してLLMを活用した新バージョンを2025年春に提供予定とのことだ。