公的年金の5年に1度の制度改正が25年に控える。現在、その前提となる年金財政の検証作業が進んでおり、早ければ7月にも公表される見通しだ。
厚生労働省幹部は「今回の改正の焦点は低年金対策だ」と言い切る。現在、40代半ばから50代前半は、いわゆる「就職氷河期」世代と呼ばれ、非正規労働に従事してきた人が多く、厚生年金に加入していたとしても受け取れる年金額が低いとみこまれるからだ。厚労省では国民年金(基礎年金)の保険料納付期間を20~59歳までの40年間から64歳までの45年間に延長し、年金額を年約10万円増やす案を検討している。
ただ、保険料負担が年約100万円増える他、基礎年金給付の半分を担う国庫への安定的な追加財源も必要となる。ある自民党議員は「確かに保険料負担は5年増えるが、10年以上年金を受給すれば追加負担以上にプラスになるので国民も受け入れられるかも。でも国庫への追加財源は増税になる」と頭を抱える。
国庫負担分への追加財源は制度改正の実施年度から即時に必要となり、40年時点では年1兆数千億円に上る。厚労省内でも「1%程度の消費税率アップが必要だが、今の政治・経済状況で理解を得るのは難しい」と認める。
実は厚労省は低年金対策でもう一つのオプションも考えている。財政が比較的豊かな厚生年金と国民年金の積立金を統合する案だ。国民年金財政の救済策でこのやり方でも給付水準が上がる。国庫負担分への追加財源が必要になる点は、保険料納付期間の延長案と同じだが、厚労省幹部は「財源が必要になり始める時期が33年度からで、約10年先送りできる」と明かす。
国民年金は改革を放置すると、「マクロ経済スライド」による目減り調整で将来、給付額が月4万円台に落ち込むという。与党内でも低年金対策への危機感は共有されており、閣僚経験者は「積立金統合案でいく。追加財源は財務省が国債を発行してでも出すべきだ」と強気だ。