日本電信電話(以下、NTT)は5月10日の決算会見で、個別化医療の実現を目指すメディカル・ヘルスケア事業を手掛ける「NTTプレシジョンメディシン」を7月に発足すると発表した。これに先立ち、同社の代表取締役社長に就任予定の是川幸士氏が会社概要と事業内容について説明する場を設けた。

  • NTTプレシジョンメディシン 代表取締役社長(就任予定)是川幸士氏

    NTTプレシジョンメディシン 代表取締役社長(就任予定)是川幸士氏

NTTグループのメディカル・ヘルスケア事業

NTTグループでは、メディカル領域やヘルスケアに関わるデータの取得から解析、サービスやソリューションの開発、社会実装まで、一気通貫で支援することを目指す。また、オンライン診療をはじめ医療機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)、医師の働き方改革の支援なども手掛けている。

グループ内にはNTTデータやNTTドコモ、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、新医療リアルワールドデータ研究機構(PRiME-R)など、ヘルスケア事業を手掛ける多様なプレイヤーを保有する。グループにおいて、高度なセキュリティ環境の下でさまざまなライフデータを取得し、パーソナルデータ流通基盤における分析を通じて、医療機関や製薬企業などに活用されるようなデータ流通基盤の構築を目指す。

  • NTTグループのビジョン

    NTTグループのビジョン

NTTプレシジョンメディシン設立

新会社の設立に伴って、健康診断を中心とした遺伝子検査サービス「Genovision(ゲノビジョン)」などを手掛けるNTTライフサイエンスが、7月1日付でNTTプレシジョンメディシンへと商号変更する。

また、NTT傘下でリアルワールドデータの活用を支援するPRiME-Rと、NTTデータ傘下で治験業務を支援するクリニカルサポートが、共にNTTプレシジョンメディシンの子会社となる。さらに、10月1日付でNTTデバイステクノのモバカル(電子カルテ)事業をNTTプレシジョンメディシンが吸収する。

この新体制により、NTTプレシジョンメディシンのグループが一体となって、データの生成から収集、分析、研究開発まで包括的な研究開発支援を目指すという。データドリブンで個人に最適な医療を提供する、プレシジョンメディシンの実現に寄与するとしている。

  • 新体制での事業展開

    新体制での事業展開

NTTプレシジョンメディシンのビジネスモデル

NTTプレシジョンメディシンが価値を提供する顧客として想定しているのは、「医療機関」「企業健保・自治体」「製薬企業・研究開発」の3つ。既存のサービスやソリューションを活用して、ヘルスケアデータの軸とした各種サービスを展開する。

  • NTTプレシジョンメディシンが展開するサービス群

    NTTプレシジョンメディシンが展開するサービス群

医療機関向けには、NTTグループが強みとするICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用して業務のDXを支援する。

具体的には、医師が自然言語で入力したテキストデータや、画像・映像・音声といった、さまざまな場面で収集されるリアルワールドデータに対して、AIを活用して構造化しデータを活用できるよう支援するといったサービスの提供を予定している。さらには、蓄積された構造化データを活用した診療サポートや症例報告書の自動生成なども提供するとのことだ。

  • 医療機関向け

    医療機関向けの取り組み

企業健保や自治体向けには、従業員や地域住民向けの検査サービス、予防サービスなどを提供し、健康増進を支援するという。NTTライフサイエンスが従来提供しているGenovisionなどを用いて、住民の健康意識向上や行動変容、検診受診率の向上、医療経済性の改善などに寄与する。

  • 企業健保や自治体向け

    企業健保や自治体向けの取り組み

製薬企業や研究機関向けに提供するのは、NTTプレシジョンメディシンが収集したデータだ。合わせて、開発研究支援や治験業務効率化ソリューションなども展開する。データの活用に際しては、協力医療機関や研究所から収集したデータを有効に活用するためのプラットフォーム基盤を整備する。

  • 製薬企業や研究機関向け

    製薬企業や研究機関向けの取り組み

是川氏は「将来的にはNTTプレシジョンメディシンおよびそのグループだけではなく、さまざまなパートナーの皆様と連携しながら、生まれてから亡くなるまでのライフコースの中で個人個人のデータに基づいた最適な治療や予防サービスにつながれるよう貢献していきたい」と意気込みを語っていた。