先端パッケージングへの関心が世界的に高まりを見せている。背景には、人工知能(AI)、HPC、5G、量子コンピューティングなど、急速に成長する一方、性能に対する要求が厳しいアプリケーションが必要とする高性能と低消費電力性の両立をエレクトロニクス業界が求めているからである。

毎年開催されている「IEEE Electronic Components and Technology Conference(ECTC)」は、マイクロエレクトロニクスのパッケージングとコンポーネントの科学技術の進歩に関する世界有数のフォーラムとして知られている。今年は5月28日から31日にかけて米国コロラド州デンバーで開催されたが(第74回ECTC、ECTC 2024)、その参加人数は過去の開催で多かった2018年の1783人、2023年の1616人を超え、2000人を超し、過去最高を記録した模様で(正確な数字は集計中)、先端パッケージングへの注目が高まっていることがうかがえる。

各国の政府も自国の管轄区域内で、先端パッケージングに対する半導体業界との共同投資プログラムを推進することを目的としたインフラ構築を行っている。ECTC 2024でも特別セッションとして、米国、カナダ、EU、インド、韓国の代表者たちが、先端パッケージング技術とインフラ開発を促進するためのそれぞれ取り組みに関する目標や枠組み、課題、成果などの説明を行った。

ECTCの「北米、アジア、欧州における先進エレクトロニクス分野への産官共同投資調査」セッションのプシェミスワフ・グロマラ座長は、「各国政府は、最先端技術へのアクセス、サプライチェーンの確保、国民の教育・雇用機会の拡大を図るため、独自の半導体エコシステムを構築する方法を模索している」と述べているほか、「米国のCHIPS for America Act(CHIPS法)が他地域の同様のプログラムに影響を与えている。特別セッションの講演者たちによる議論は、各国の先端パッケージングの政策動向を知る貴重な機会となった」とセッションの様子を伝えている。

各国のパネリストからの発言内容の要約を、ECTCが以下の通り公式に発表している。

米国

CHIPS for America研究開発プログラムのR&DディレクターであるEric Lin氏が、先端パッケージングの国際的な状況という観点からこれらのプログラムについての説明を行ったほか、米国の研究開発目標の概要や、米国が戦略目標の推進に役立てるためにアジア、ヨーロッパ、北米の国際パートナーと行っているいくつかの取り組みについての詳細な説明などを行った。

米国では、2022年に可決されたCHIPS法により、最先端のロジックやメモリなどの先端技術、および先端パッケージングのための施設、設備、製造能力への大規模な投資を誘致するために390億ドルの補助金支給が承認された。また、より高度な半導体の組み立て、パッケージング、テスト機能につながる研究開発プログラムに対する110億ドルの支援も承認されており、その中には、米国の半導体産業における先端パッケージングにおける米国の技術リーダーシップという野心的な目標の実現に役立つイノベーションを開発するための国家先端パッケージング製造プログラムがある。

カナダ

カナダ全土の69の大学が協力して1984年に設立された非営利団体である「CMC Microsystems」は現在、1万人の学術関係者と1200社の企業を結び付け、高度なプロトタイプの設計、構築、テストを行っている。ECTC 2024では、CMCの技術担当VPであるDavid Lynch氏が、CMCと他の14の創設組織が主導し、カナダ製のマイクロチップ製造プロセス、IoTベースの製品とサービス、量子技術の開発を加速するための5年間で2億ドル以上を投資するプロジェクト「FABrIC」について説明した。

FABrICは、化合物半導体、MEMS、フォトニクス、超伝導体におけるカナダの強みを基盤としており、これらの技術の専門家と協力して製品を商品化し、関連するパッケージング手法を含む国家半導体エコシステムの構築に役立つIPリソースを作成および共有している。

欧州

2023年7月に可決され、EU加盟国および民間セクターの資金提供を受けた欧州CHIPS法は、欧州でのファブへの多額の投資を可能にしたが、パッケージングに特に焦点を合わせたものではない。ECTC 2024では、「EPoSS」として知られる欧州スマートシステム統合協会の事務局長であるエリザベス・シュタイメッツ氏が、欧州で実施中または検討中の主要な活動の概要を示した。

その1つは、進化を続ける「Pack4EU」イニシアチブで、その目的は、高度なパッケージングのための汎欧州ネットワークと、欧州でのパッケージングを促進するロードマップを作成することである。

EPoSSは、持続可能な社会のためのインテリジェントでグリーンなスマートシステム技術とソリューションの開発と統合を主導する、ドイツの法律に基づいて設立された国際的な非営利団体である。20を超える欧州加盟国の大手産業企業と研究機関で構成され、これらの分野での活動を調整するためのビジョンを策定し、戦略的な研究アジェンダを設定することを目的としている。

インド

ECTC 2024で、インド政府顧問のラオ・トゥンマラ氏は、インド経済の規模と成長、学界、産業界、政府間の多くの提携機会、インドの熟練した高学歴の大規模な技術労働力、インド国内外の世界中の学術専門家との協力の可能性、インドの半導体エコシステムを強化する政府主導の戦略的イニシアチブである「インド半導体ミッション(ISM)」を背景に、インドの半導体産業の状況と産業発展の大きな可能性について説明した。

同氏は、インドにおける戦略的研究開発の焦点は、急成長する大規模市場に対応するための統合半導体およびシステムパッケージの開発であると述べた。

韓国

2023年3月に可決された韓国版CHIPS法は、韓国の半導体産業への投資に対して大幅な減税と控除を提供する。韓国電子通信研究院のKwang-Seong Choi氏は、2.5DパッケージベースのHBM最適化、10〜40μmボンディング、ハイブリッドボンディングなど、韓国企業が優れた能力を発揮してきた技術分野に重点を置くパッケージングイニシアチブについて説明した。