「定額減税」は来年も? 政府・与党内で認識にズレ

6月開始の1人当たり4万円の定額減税制度を巡り、政府・与党内で”ズレ”が生じている。岸田文雄首相の側近である自民党の木原誠二幹事長代理が5月26日のテレビ番組で、「来年も(再実施を)考えなければいけない」と述べ、景気の動向次第で来年も継続する必要性に言及。これに対し、鈴木俊一財務相は同28日の閣議後会見で「複数年度にわたって実施することは考えていない」と、木原氏の発言をけん制した。

 鈴木氏は定額減税に関し、「国・地方合計で3・3兆円、関連する給付も含めて5・5兆円という思い切った規模の支援」と強調。「単年度の消費刺激効果にとどまらず、賃金上昇と相まって所得の伸びが物価上昇を上回る状況を作ることによって、デフレマインドを払拭するきっかけとするため」と述べた。

 ただ、政府が給与明細に所得税の減税額明記を義務付けたことで、企業の経理現場では減税額の計算や管理など、追加業務が発生し、不満が出ている。与党内には「働き方改革と真逆だ。政権への逆風がさらに強まるだけ」(幹部)と冷ややかな声もくすぶる他、当の財務省内でも「5兆円も使うのに景気浮揚効果は薄いし、政権の人気取りにもならない対策」と減税の意義を疑問視する声は多い。

 そもそも、定額減税が鈴木氏のいうデフレ心理を払しょくするかも不透明だ。今春闘では主要企業だけでなく、中小企業の賃上げ幅も高水準である一方、電気・ガスの値上げがすでに始まっている上、円安基調が長引き、食料品などの価格は今後さらに上昇する可能性もあり、家計の節約志向は続くとの見方が多い。結果的に「首相の支持率回復のための政策」(財務省幹部)で終わるかもしれない。

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