米国の「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」には、半導体の研究開発(R&D)に対する米国連邦投資として過去最大規模となる、商務省と国防総省を合わせて130億ドル相当の投資プログラムが盛り込まれている。
このプログラムの要となるのが「NSTC(国立半導体研究センタ)」で、これには50億ドル以上の投資が予定されており、「先進的な半導体技術の研究と試作を実施し、国内の半導体労働力を育成して、国内サプライチェーンの経済競争力とセキュリティを強化する」ことを目的としている。米国半導体工業会(SIA)は、官民研究コンソーシアムであるこのNSTCの成功を促進するための推奨事項を「Recommendations for the National Semiconductor Technology Center(NSTC)」と題するレポートにまとめて発表した。NSTC設立にかかわる関係機関に対して、最新の半導体業界のコンセンサスと優先事項を整理して提示するために作成したという。
主な推奨事項とその内容は以下の通り。
業界主導の官民パートナーシップ
NSTCは業界の技術優先事項を反映し、米国半導体業界の技術アジェンダおよびロードマップとの整合性を確保する必要がある。
目的
NSTCの研究課題はフルスタックのイノベーションを追求する必要があり、関連するインフラはパイロット、プロトタイピング、および商用スケーリングのニーズを満たす必要がある。
運営構造
NSTCは、産業サブセクタ(例:先進のロジックやメモリ、アナログなど)、横断的な研究開発優先事項(例:エネルギー効率、セキュリティなど)、およびエンドマーケット(例:自動車、エッジ、新興技術など)に重点を置いた複数のテクノロジーセンターを構成する必要がある。
また、新たなテクノロジーセンターとして「Sustainability in Manufacturing」の設置も提案しているほか、既存の施設を可能な限り最大限活用し、プログラムの目標を達成するために必要な場合にのみ新しい施設を建設すべきであるともしている。
参加構造
NSTCは、この研究開発プロジェクトへの参加と施設へのアクセスに関して主に会員制モデルで運営されるべきであり、多様な利害関係者に適切かつ継続的なサポートを提供するために、さまざまな資金調達メカニズムを活用するべきである。
政策上の考慮事項
NSTCは既存の業界で受け入れられているプロトコルを活用する必要がある。また、新しいポリシーやガイダンスが必要な場合(国内生産要件、研究セキュリティ、知的財産権など)、業界の関与に基づいて明確なガイダンスを提供することが重要である。
なお日本では、NSTCに対応する研究開発組織「最先端半導体技術センター(LSTC:Leading-Edge Semiconductor Research Center)」がすでに2022年12月に設立されている。一方のNSTCの発足に関しては、SIAはじめ関係諸団体からさまざまな要望が出されつつあり、NSTCが正式に運営を開始するまでには、まだまだ紆余曲折がありそうである。