東京工業大学(東工大)は6月6日、同・大学 学術国際情報センターにて、同大学が運用するスーパーコンピュータのシリーズ最新モデルとなる「TSUBAME4.0」が、4月1日から本格稼働を開始したことを発表した。

  • TSUBAME4.0の外環

    TSUBAME4.0の外環(出所:東工大プレスリリースPDF)

TSUBAMEシリーズは2004年に開発が始まり、初代1.0は2006年4月に本格稼働を開始。以降、2010年11月には2.0(2013年に2.5)に、2017年8月に3.0とバージョンアップを重ねてきた。そのスペックは、2.0は2010年に当時の計算速度世界第4位、3.0は2017年6月(本格稼働前)に省電力スパコンランキング「Green500 List」の第1位を獲得するなど、世界有数の性能を示してきたことでも知られる。

TSUBAMEシリーズはGPUの大幅な活用を特徴とし、今回の4.0は3.0からの継続性を保ちつつ、性能向上に加え、利用のしやすさという点でも向上が達成されたという。4.0は、科学技術計算で主に利用される64bitの倍精度と、AI向けの16bitの半精度を選択することが可能。その総演算性能は、倍精度では66.8ペタフロップス(1秒間に6京6800兆回の計算が可能)、半精度では952ペタフロップス(1秒間に95京2000兆回の計算が可能)となっている。3.0と比較すると、前者はおよそ5.5倍、後者はおよそ20倍だ。この性能は、現存する国内の研究・教育機関のスパコンの中では、「富岳」に次ぐ2位相当となる(主要スペックは、最後に掲載)。

さらに4.0では、シリーズ初の試みとして、ラックデザインの公募が行われた。そして、新しいスパコンが持つさまざまな可能性や用途の広がりをイメージし、4羽の「つばめ」が自由な流線を描きながら、どこまでも無限に広がる世界を羽ばたいていく様子を表すデザインが採用されたという。

  • TSUBAME4.0のラックのデザイン

    TSUBAME4.0のラックのデザイン(出所:東工大プレスリリースPDF)

ちなみにTSUBAMEシリーズは、東工大の学生なら誰でも無料で利用できることでも知られるが、同・大学内の学生・研究者だけでなく、学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)や、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)などの共同利用プログラムを通じて、学外研究者や企業研究者なども利用可能だ。今後も、「もっとみんなのスパコン」として、日常的に活用されることを目指すとしている。

今後の展望については、東工大は2024年10月に東京医科歯科大学と統合し、「東京科学大学」として新たなスタートを切ることに関連して、益一哉東工大学長は、「TSUBAME4.0は、気象、物性科学、材料科学、計算化学や映像処理、言語処理、人工知能処理など、今までの東工大の研究だけではなく、生成AI医歯科学や地球環境科学などの医科歯科大との融合学術領域の進展においても重要な役割を果たす」とコメント。TSUBAME4.0は、東京科学大が目指す「コンバージェンス・サイエンスの展開」においても、不可欠な計算資源インフラとして貢献していくとしている。