苦戦続きだった海外事業を、新経営体制で伸ばしていけるのか―─。
NTTは5月10日、主要事業会社のトップ人事を発表した。NTTドコモの前田義晃副社長(54)が6月14日付で社長に昇格し、井伊基之社長(65)は相談役に就任する。情報システム開発のNTTデータグループでは、6月18日付で佐々木裕副社長(58)が社長に就き、本間洋社長(68)は相談役に退く。
一連の人事には若返りのほか、新事業の拡大を加速したい思惑がのぞく。ドコモの前田氏はリクルート出身で情報配信サービスやポイントサービスといった領域で実績を重ね、現在は非通信分野を担う「スマートライフカンパニー」を率いる。
データGの佐々木氏は国内事業会社のNTTデータ社長との兼務で、海外事業会社のNTTデータインク社長にはアビジット・ダビーEVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)を充て、連携を強化していく考えだ。
データGはNTT傘下で海外事業を手がけていたNTTリミテッドを2022年に自社の海外事業と統合するなど、比較的グローバル化が進んでいると評される。だが、ドコモは2000年代以降、米AT&Tワイヤレスや印タタ・テレサービシズなどに投資してきたものの「ほとんど失敗した」(NTT幹部)。
そこで今回、資本金約280億円の新会社「NTTドコモ・グローバル」を7月1日付で発足。同社の社長はドコモの栗山浩樹副社長(63)が務める。「一時はNTT社長の有力候補とも言われた」(業界関係者)栗山氏に海外事業の指揮を託し、次世代インターネット技術「Web3」関連サービスの展開などにつなげる狙いだ。
ただドコモは昨今、屋台骨の通信の評判が「つながりにくい」と芳しくない。前田氏は「通信品質の不満に誠実に向き合う」と約束したが、非通信事業や海外事業を伸ばしつつ通信基盤を守っていけるか。バランス感覚も試されることになる。