Samsung Electronicsの労働組合が、経営陣との賃金交渉が決裂したままの状態であることを踏まえ、6月7日に同社創業以来初めてのストライキを計画していると報じられている。
このストライキの伴う同社の半導体事業への影響についてTrendForceでは、DRAMならびにNANDともに生産への影響は生じず、出荷不足も起こらないだろうと分析している。また、DRAMおよびNAND、いずれのスポット価格もストライキ発表前から下落傾向にあり、発表後もこの下落傾向に変化はないとの見方を示している。
Samsungは、2023年のDRAM生産量の世界シェアが46.8%、NANDが同32.4%といずれもトップシェアを有しており、もし1日でも生産や出荷が停止することになれば市場への影響は相当なものとなる可能性がある。しかし、TrendForceによると、もしストライキが起きても生産に影響しない大きな理由が4つあるとしている。
1つ目は、今回のストライキは労働組合の参加率が高いソウル瑞草区の同社本社の従業員が主に関与しているが、それらの従業員は直接的には半導体の生産には従事していないということ。2つ目は、今回のストライキは1日のみの予定で、生産スケジュールの柔軟性でカバーできる範囲であること。3つ目は、6月6日は韓国の祝日で、すでに一部の従業員は6月7日に休暇を取得する申請を行っており、事前に生産スケジュールと人員配置を調整できていること。4つ目は、前工程工場のほとんどが自動化されており、作業員の労働は最小限で済むこと。これら4つのことを踏まえれば、今回のストライキがメモリ市場に対して与える影響はそこまで大きくないと考えられるという。
なお、ストライキを予定している全国サムスン電子労働組合の組合員数は2万8000人ほどで、同社の従業員の中で加入している人の割合である組織率は23%となっている。ただ、半導体事業部門は、2023年が赤字のために成果給が支払われなかったこともあり、社員の組合への加入が急増しているとも言われている。同社は、創業以来、労働組合の存在を認めない「無労組経営」を行ってきていたが、企業トップの贈賄疑惑や不正蓄財などに対する世論の批判の高まりを受ける形で2020年、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長がそれまでの無労組経営を止め、経営改善を図ることを決めている。