ジオテクノロジーズは5月30日、同社が保有する人流データとAI技術を組み合わせ、住宅街にあるような生活道路で構成される交差点の事故リスクを算出する「交差点リスク推定モデル」の開発したことを発表した。

  • 交差点リスク推定モデルの特長

    交差点リスク推定モデルの特徴

交差点リスク推定モデルの特徴

交差点リスク推定モデルの最大の特徴は、人流データから全ユーザーの通行軌跡を生成することで、交差点における通行パターン(直進・右折・左折)を識別し、交差通行量と合流通行量をリスク推定因子として取り入れていること。

たとえば、互いに向かい合った直進は互いに接触はしにくく、交差する直進同士や合流する通行同士は互いに接触する恐れがある。このように単純な通行量からの推定と比較して、効果的なリスク推定が可能だという。

ジオテクノロジーズが保有する人流データには、車両だけでなく歩行者の情報も含まれているため、歩行者専用の通行軌跡を作成可能。これにより、車両同士の事故リスクだけでなく、車両と歩行者の事故リスクも推定できるという特徴も有する。

リスク推定結果と事故情報を比較して精度を検証

同社は、人流データから算出した通行パターン、車両や歩行者の通行量、交差点の構造などの特徴を基に、警察庁が公開している交通事故情報を正解データとして使用し、交差点の交通事故リスクを推定するモデルを作成し、特定エリアのリスク推定結果と事故情報を比較して精度を検証を行った。

リスク推定の結果のうち、ある一定のリスク値を超えた地点を危険な交差点と設定し、交通事故統計情報による実際に事故が起きた交差点と比べることで精度検証を行った結果、危険と判定された交差点数は115件と全体の1万3787件に比べると非常に少ない件数にも関わらず、その中で実際に事故が発生していた件数は70件と高い割合で一致することが確認できたという。

これは、実際に事故が起きていた危険な交差点を高い精度で割り出すことができたのに加え、外した45件の交差点に対しても事故は起きていないものの、事故が起きている交差点と同様の特徴をもった潜在的に危険な交差点であることを示している。

  • 危険と判定した交差点の内訳

    危険と判定した交差点の内訳

リスク推定の精度向上に貢献

また、交差点リスク推定モデルにおける各事故種類のリスク推定において、特徴の寄与度を分析したところ、車両同士の事故、車両と歩行者の事故のいずれにおいても、交差通行量と合流通行量が高い割合で寄与しており、また、車両と歩行者のリスク推定においては歩行者に関する特徴も高い割合で寄与していたということだ。

これらのことから、交差通行量と合流通行量がリスク推定の精度向上に貢献していることが示され、特に歩行者の交差通行量が重要な要素であることが判明し、さらに車両と歩行者の事故リスクを推定する場合、最も寄与している特徴が歩行者の交差通行量であることから、歩行者の情報が推定の精度を高めるために欠かせない重要な要素だということがわかった。

  • 上:車両同士の事故リスク推定にて寄与が大きい特徴トップ3、下:車両と歩行者の事故リスク推定にて寄与が大きい特徴トップ3

    上:車両同士の事故リスク推定にて寄与が大きい特徴トップ3、下:車両と歩行者の事故リスク推定にて寄与が大きい特徴トップ3

今回の調査により、交差点の通行量は朝・昼・夕方といった時間帯によって刻々と変化し、リスクもそれに合わせて変化することが見込まれることから、ジオテクノロジーズは時間帯ごとのリスクを推定するモデルの開発も進めていく方針。

また、対象交差点の範囲を拡張して、信号機がある交差点も含めてリスク推計できるようにモデルを構築した上で、エリアを全国に拡張して評価するなど、製品化に向けた取り組みを進めていく計画としている。