ピュア・ストレージ・ジャパンは5月29日、日本企業を対象に実施した、AI導入が ITインフラおよび企業のサステナビリティに与える影響に関する調査「変革の原動力:日本企業における AI 導入に伴うエネルギーとデータ需要への対応」の結果を発表した。
同調査の回答者は、売上1,000億円以上で、AI導入済みの企業に所属する社員で、事業開発/経営戦略・事業戦略/購買/情報システム/技術のいずれかの業務に関与しており、IT 関連サービス・通信関連サービス・DX(デジタルトランスフォーメーション)推進サービスのいずれかの購入・選定などへの関与度を回答した207名。
AI導入により生じているエネルギーやITインフラにまつわる課題とは
日本政府は2022年にAI戦略を策定し、AIを最優先課題に掲げている一方、2050年のカーボンニュートラルの実現も目指している。そうした中、企業も環境やサステナビリティに配慮しながら、AI導入やDXを推進していくことが求められている。
代表取締役社長の田中良幸氏は、「以前から、われわれはAIとESGは両輪と訴えてきた。ただし、AIが拡大する中で、企業はAIを活用して達成したい目的を見失っていないだろうか」と、AIとサステナビリティとの関連性を指摘するとともに、現在のAI活用に対する疑問を投げかけた。
田中氏は、調査結果のポイントについて、以下3つの項目に分けて説明した。
AI導入における課題
AI導入における課題に関する回答結果は以下の通りだ。
- AI導入前の課題について、28%が「人員・人材不足」、24%が「知識・経験不足」と回答したが、導入後の課題は、「人員・人材の増員」(36%)、「AI対応のインフラの不足」(27%)が上位の回答となった
- AI導入における電力消費・放出熱増加について、「事前に準備、対応していた」と回答した人は51%で、約半数しか事前対策ができていなかった
田中氏は、導入後の課題について、インフラが第2位に上がっていることから、「ロードブロックになっている」と指摘した。
AI導入における ITインフラへの影響
AI導入における ITインフラへの影響に関する回答結果は以下の通りだ。
- 55%がAI導入後に ITインフラのアップグレードが必要になったと回答した
- 48%がITインフラの整備なしでAI導入した場合は「AIを効果的に活用できない」と回答した
- 83%が、「サステナビリティ目標を達成するには、AIプロジェクトに対応したITインフラが不可欠である」と回答した。
田中氏は、「ITインフラを整備しないでAIを導入した結果、 ゴールを達成できていないという感じている人が多いが、世界が瀕している課題が浮き彫りになっていると感じている」と述べた。
AI導入におけるサステナビリティ目標への影響
AI導入におけるサステナビリティ目標への影響に関しては、以下のような回答が得られた。
- AI導入後のサステナビリティ目標達成に向けた取り組み状況について、44%が「前進しているが、さらなる努力が必要」と回答した
- 電力量・放出熱削減の対策として、34%が「よりエネルギー効率の高いハードウェアへの投資」と回答した
- 83%が「サステナビリティ目標達成にはAI対応のITインフラが不可欠である」と回答した
田中氏はこれらの結果について、「AIを導入することで、電力、熱、廃棄物が増大しているが、人間が求めている社会に逆行している。また、AI導入によってエネルギーが逼迫していることから、データプラットフォームを見直す必要がある。データプラットフォームに対する要件が変わってきている」とコメントした。
AI導入と共に増える電力量、サステナブルなITインフラの利用を
同社は、ITインフラの基盤となるストレージを提供していることもあり、サステナブルなITインフラの構築に注力している。ピュア・ストレージ アジア太平洋・日本地域担当 VP ネイサン・ホール氏が、AI活用とサステナブルを両立するITインフラについて説明を行った。
ホール氏は、「AIにまつわる話題として、とかくChatGPTやLLMばかり注目されがちで、人々はその水面下にある事実に気付いていない」と述べ、AI活用を支えるセキュリティやガバナンス、データ統合、データ・インフラといった課題があると指摘した。
また、AIの世界では多くのデータが使われており、その処理に膨大な電力が使用されている。ホール氏は、NVIDIAのGPU「Blackwell」の消費電力はラック当たり125キロワットであるのに対し、AIデータセンタープラットフォーム「DGX SuperPOD」の消費電力はシステム当たり最大5.5メガワットとケタ違いであることを示した。
つまり、AIを使えば使うほど、エネルギーの需要が増え、サステナビリティ実現に向けた問題が拡大することになる。しかし、「データはカーボンニュートラルではない。AIによってエネルギーの需要が高まっているが、データセンター事業者はその準備ができていないし、データセンターはこれからも成長する」と、ホール氏はAIを取り巻く現状について警鐘を鳴らした。
AIが持続可能な世界に貢献できるよう、他社製品と比べて、同社のストレージ製品はスペースやエネルギー量が少なく、モジュール形式のEvergreenコンポーネントによって電子廃棄物を削減しているという。
ホール氏は、「データストレージの寿命はせいぜい5年で、その後は捨てることになる。つまり、冷蔵庫サイズの筐体を捨てている。しかし、当社のコンポーネントを交換できるEvergreenは寿命が長く、6年前に買ったユーザーの97%はまだ使っている。当社のストレージを使えば、データが増えても、電力は今よりも下回るだろう」と、同社のサステナビリティにおけるアドバンテージをアピールしていた。